平成23年特許法の改正の施行決まる~通常実施権の当然対抗制度~

今年23年6月に公布された特許法の施行が、24年4月1日からと決まりました。

 

改正の要点は、

1 通常実施権の当然対抗制度

2 冒認出願において真の権利者の救済

3 迅速な紛争解決のための再審

4 新規性の喪失の例外規定の緩和

などです。

 

今回の改正で、特許権者からライセンス契約により通常実施権を受けていたライセンシーは、特許権者であるライセンサーが第三者に譲渡した場合、登録等を要せずに当然に特許件を譲り受けた第三者に対して、自己の通常特許権を主張することができるようになりました(当然対抗制度)。改正後の特許法99条は、「通常実施権は、その発生後にその特許もしくは専用実施権またはその特許権について専用実施権を取得した者に対しても、その効力を有する」としています。つまり、従来の登録制度下で見られた譲受人から差し止め請求や損害賠償請求を受けないということです。また、ライセンサーが破産した場合にも、破産管財人の解除権は認められないことになります。

 

この改正で、特許法が準用されている実用新案権や意匠権についても、当然対抗制度が導入されることになりました。他方、商標権や著作権については、当然対抗制度は認められません。

 

通常実施権は、ライセンス契約で定められますが、通常実施兼の許諾だけが書かれているわけではないので、その他様々な契約上の権利義務の取り扱いについては、改正後の枠組みで、どう考えたらよいのでしょうか。審議はなされたようですが、今回の改正ではライセンス契約関係が譲受人に承継されるか否かについては、個々の事案に応じて、判断されるのが望ましいというところに落ち着いたようです。

 

実際、複数のライセンス契約に基づき、多数の通常実施権が許諾されていることも多いので、そのすべてを登録することの手間とコストから、登録制度は活用されなかったため、アメリカやドイツ同様に当然対抗制度を採用したものです。

 

いずれにせよ、特許権を譲受けようとする場合取引の安全を保護する規定がない実情では、譲受けの際のデューディリジェンスが大切です。(池田桂子)