商標について ~商標とは~
事業者や新たに起業される方から、「商標登録はした方が良いのですか」という相談を受けることがあります。
そこで、本コラムでは、今回から4回にわたって、商標について取り上げたいと思います。
第1回は、商標とは何か、というテーマで、商標制度の概要を説明します。
1 商標とは
商標とは、事業者が、自己の取り扱う商品やサービスを他の事業者のものと区別するために使用するマーク(識別標識)のことです。
例えば、テレビにはメーカーのロゴがプリントされていることが多いですが、テレビの購入を考えている人は、ロゴを見ることで、そのテレビがどのメーカーが製造したものなのかすばやく認識をすることができますし、街角でゴールデンアーチ(「M」のような形をしたマクドナルドのロゴ)を見かけると、そこにファーストフードレストランのマクドナルドがあることがすぐにわかります。
2 商標の機能
上記のとおり、商標は、自社の商品・サービスと他社の商品・サービスと区別する機能を果たしますが、商標の持つ機能はそれだけではありません。
例えば、私たちは、あるメーカーのロゴがついたテレビを見たときに、「このメーカーの製品だから安心だ」と考えて購入することがあります。これは、事業者が商品やサービスの提供を通じて消費者の信用を積み重ねることにより、商標自体に「信頼できる」「安心」といったブランドイメージがついてくるという例です。このように、「同一の商標が使用される商品・サービスの品質が同一であることを示す機能」のことを品質保証機能といいます。
商標には、それ以外にも、出所表示機能(同一の商標が使用される商品・サービスの出所が同一であることを示す機能)や宣伝広告機能(商標が多く使用されることにより、需要者に記憶され、商品・サービスの需要を拡大・喚起する機能)があるといわれています。
3 商標の保護
商標は様々な機能を有することから、商標を他人に無断で使用されると、事業者は、その商標から得られたはずの利益を他人に奪われることになります。そのため、商標を保護する必要性が生じます。
その必要性から、一定の要件を満たす場合に、商標を保護することを定めているのが、商標法です。商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的と」しています(商標法1条)。
4 商標法で保護される要件
(1)商標法で保護される商標とは
商標法における「商標」とは以下の要件を満たすものをいいます(商標法2条1項)。
「人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
①業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
②業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)」
このように、商標法上は、単なる「標章」ではなく、「標章」とそれを使用する商品・サービスを組み合わせたものを保護の対象としています。
(2)保護を受けるための要件
商標法上の保護を受けるためには、特許庁に商標登録出願をする必要があります(商標法5条)。特許庁では、出願された商標が以下のような登録できない商標に当たらないかを審査し、いずれにも該当しない場合に登録査定を行い、登録料が納付されると、商標権の設定登録を行います。
①自己の商品・役務と、他人の商品・役務とを区別することができないもの
②公益に反する商標
③他人の商標と紛らわしい商標
(商標の出願・登録については、次回コラムで詳しくご説明します。)
5 商標登録の効果
商標登録がなされると、権利者は、登録の際に指定した商品(指定商品)又は指定したサービス(指定役務)について登録商標を独占的に使用できるようになります。
権利を侵害する者に対しては、侵害行為の差し止め、損害賠償等を請求できます。
6 商標権の存続期間
商標権の存続期間は、設定登録の日から10年で終了します。ただし、存続期間の更新登録の申請をすることによって、何度でも更新することが可能です。
以上が商標制度の概要となります。
次回は、商標登録手続きやその際にかかる費用について説明します。
(川瀬 裕久)