家族は味方?それとも敵?②
4月1日から、後見支援信託という制度が全国の家庭裁判所で導入されました。認知症などで判断力が衰えた高齢者らの財産を守る「成年後見制度」に信託契約を利用した新しい仕組みが導入されることになりました。
この仕組みが考案された背景には、親族後見人による被後見人の財産侵害があります。平成12年に導入された成年後見制度ですが、年度における開始件数は、平成21年には、12年開始当初の4倍超となっていますが、親族による財産侵害もまた増加しています。
最高裁判所は、後見申立があった場合に、専門職後見人において、その後の生活計画を立てさせ、日常生活に必要な一定のお金を残して、それ以外の財産(不動産を除く)を原則として換価させて、信託財産として預けさせます。信託は後見人と信託銀行が契約を締結し行います。専門職後見人は辞任し、その後は親族である後見人によって管理されますが、当初の計画にないものについては、裁判所の指示書がないと信託財産から取り出すことができません。
後見対象者である高齢者らの金融資産のうち、当面使う必要のない大きな資産は、元本が保証される信託契約を結んで信託銀行に預けることとし、日常的に使用する少額のみを一般口座で、親族などの後見人が管理するということになります。
例えば、住宅リフォームなどで、大きな支出が必要になった場合は、後見人が家庭裁判所に申請してチェックを受け、家庭裁判所が本人のための支出だと認めれば「指示書」を発行して信託財産からの支出を認めるという手順になります。
今回の制度は、財産の保全に主眼が置かれている印象もあり、後見人本人の権利保護や身上監護が後退するのではないか、本人のための財産利用が抑制的になる、さらには、後見事件一般へ信託制度が波及し、後見業務が画一的な取扱いとなるのではないか等の懸念も日弁連の意見書などで指摘されています。本当に被後見人のための支出なのか、親族である後見人にとっての利益ではないのか、立ち止まって考えることが必要です。(池田桂子)