急速に進む書物のデジタル配信~2010年著作権法の改正~
インターネットを活用した著作の発表が相次いでいます。
最近では、ペーパーレスで、ネット配信だけという本も現れました。その背景にはデジタルコンテンツの流通促進のために急がれていた著作権の改正が2010年1月になされたことも背景となっているようです。
情報通信を効率化するために、ネットワーク上のキャッシュサーバーやバックアップサーバーでの一時的な情報蓄積が複製にはあたらないと明記されたことは、通信事業者などにとっては安心材料です。
改正から1年が経過しましたが、改正は通信事業者のみならず、その他の事業者や市民にとっても、利用しやすいように変わった点がありますので、ご紹介します。
情報検索サービスに必要な行為は著作権者の許諾を得なくとも可能であることが明記されました。もっとも権利者がネット上で情報収集を拒否する旨の意思表示をしていたら別です。
あのとき流れていたあの音楽、演奏家がわからないけどちょっと使いたい、と言うとき、これまでは、著作権者の許諾が得られないと利用ができないのが実際でした。改正により、文化庁長官の裁定制度を利用し、また、供託金を供託する制度を利用すれば、裁定結果が出る前でも利用ができるようになりました。
また、インターネット販売での商品紹介用の画像が無許可で可能になりました。複製防止措置などの一定の措置を条件としますが、権利者の許諾なしに行うことができるようになりました。写真などの活用で、販売に繫ぐことが期待されます。
研究分野では、情報解析という目的で、音声、映像、文字列などの要素を抽出して比較分類することが行われています。解析技術開発は研究には欠かせないもの。できあがったデータベースはまた別の権利対象となりますが、様々な分野での研究開発の進展が進むと良いですね。
もう一つ、ご紹介したいことがあります。
点字図書館等に限定されていた録音図書の作成が公共図書館にも拡大されました。デジタル図書の作成や映画・放送番組の字幕・手話の付加など今まで情報格差に悩まされてこられた障がい者の方々を支援する市民の方々にも朗報といえると思います。(池田桂子)