投資信託や仕組債には慎重に
預金のレートが恒常的に低い中、有利な資金運用と称していろいろな金融商品が開発、販売されています。特に、最近は、そのシステムが複雑で、銀行や証券会社の担当者の説明を聞いても、その仕組みやそのリスクがどの程度のものであるか理解できない商品が、ハイリターンの名の下に販売されています。
ハイリターンのものは、基本的にハイリスクと考えられ、ハイリターンでローリスクのものはないと考えるべきですが、担当者の説明等により、ハイリスクに目がいかずに大きな損を出してしまうということもあり、これが裁判沙汰となる事例が多く出てきています。
金融商品取引法では、一般消費者を含めた投資家を保護するために種々の規制をし、各社においても、商品に応じた適格性や販売の方法等につき、内部基準を設けたりしておりますが、担当者が業績を上げるために、これらに違反してトラブルとなり、裁判になった例があります。証券会社側の責任が認められた例は多くありますが、最近になって、銀行についても同様に認められた例が出てきております(大阪地裁H22.8.26判決。判例タイムズ1345号181頁)。
この事例の投資家は、79才の一人暮らしの女性で、投資経験もほとんどなく、いわゆるノックイン型の投資信託を購入したもので、日経平均株価が一定価格を下回ると、元本割れのリスクが発生する商品で、元本を重視する本例のような投資家向きのものでないこと、また、投資信託の販売についての銀行の内部基準(75才以上の顧客は購入を勧誘してはならず、本人申出の時にも、内部管理責任者が、意向確認をすること等)にも違反していたこと等から、適合性違反を、また、十分な知識や研修を受けていない担当者による説明が十分でなかったことを理由に、説明義務違反を認定して、損害賠償を認めています。
投資は、未来という不確実な、かつコントロール出来ない事態を確率的に判断するという性格上、絶対安全ということはありません。投資判断にあたっては、販売担当者の話を鵜呑みにせず、納得できない点は食い下がり、それでも十分な説明が得られない場合や自身で取引の仕組みが理解できないときは、やめておいた方が無難ですね。(池田伸之)