新型コロナウイルス感染症と賃料・テナント料
1 はじめに
新型コロナウイルス感染症により、店舗やオフィスを賃貸借している法人・個人事業主では、売上げが十分に立たないため、賃料・テナント料の支払いが苦しくなってきています。
他方、貸主である大家も、法人や個人事業主であることが多く、その場合、大家も金融機関からの融資の返済や固定資産税等の納税のため、賃料・テナント料の収入がなくなると、経営が立ちゆかなくなることが起こりえます。
なお、賃料・テナント料については、現在,政府が支援策を検討しているようですので、その動向に注意する必要があります。
2 賃借している法人・個人事業主(いわゆる「店子」)の場合
店舗やオフィスを賃借している法人・個人事業主については、賃貸借契約書上、新型コロナウイルスの影響で賃料を減額する権利があるとは言えないことが多いと思われます。
そうすると、大家側に対して、現在の経営状況、店舗であれば営業自粛要請の対象業種のために売上げが減少あるいは消滅したことを丁寧に説明して、大家の理解を得て、賃料減額に結びつける必要があります。
大家側としても、現在の経済情勢から、新しく賃借人を探しても、入居者がなかなか見つからず空室を抱えるリスクがありますので、平時よりも積極的に減額に応じてくれる場合があると思われます。
まずは、大家に対する現状の丁寧な説明から始める必要があります。
3 賃貸している法人・個人事業主(いわゆる「大家」)の場合
店舗やオフィスを賃貸している法人・個人事業主については、月額で返済している融資の返済額、固定資産税等の納税額、所有物件の維持・メンテナンス費用等のコストから導かれる損益分岐点までであれば、賃料の減額に応じることも検討する必要があります。
それは、上記のとおり、店子が退去した場合、空室のリスクが生じますので、現在の経済情勢では空室リスクを抱える期間の予測が全く不可能であるためです。
そこで,例えば,合意によりあらかじめ元の賃料に戻る時期を定めた一時的な減額をするという方法なども考えられるところです。
そして,賃料の減額に応じた場合には,損金算入が可能となる場合が例示されています(https://www.mlit.go.jp/common/001343017.pdf)ので,減額に応じて損金算入し,将来的な税負担を軽減するという考え方もありえます。
また、店子からの賃料減額については、単純に賃料の減額に応じた場合、新型コロナウイルスの問題が落ち着いたあとも、減額した賃料のままで賃貸借をしたいと言われ、元の賃料水準に戻せないリスクもあります。このリスクを回避するためには、一度、満額での賃料を受領し、そのうちの一部を経営の支援として、大家から店子に支払う(返金する)という方法もあり得ると思われます。この場合,国税庁の例示で損金算入できる場合に当たり得るのかは別途判断する必要があります。
〈小澤(こざわ)尚記(なおき)〉