法人破産について(第2回)~代表者の債務整理を上手に行うために~

今回は、会社代表者の債務整理について、ご説明します。
中小企業の場合、金融機関等からの借入れをする際、あるいは仕入れをする際に、企業の信用力を補完するため、会社代表者が連帯保証をしているケースが大半を占めています。
後述する経営者保証ガイドラインにより、今後は、中小企業の場合でも代表者の個人保証をとらずに、企業自体の収益力に注目して融資がなされるケースも増えていくとは思いますが、現状多くのケースでは代表者の個人保証が融資にあたって要求されることが大半です。
したがって、会社経営が破綻した場合、個人保証が現実化することになり、代表者が債務を返済できない場合、会社について再生、破産等の法的整理をとるだけでは足らず、個人についても債務整理の必要が生じます。

債権者との任意の話し合いで、連帯保証債務についても減免を承諾してもらえるときでも、債権者が、特に金融機関の場合には、経営者保証ガイドラインに沿った特定調停による解決を求められることが多いと思います。これは、債権者との間で債務の減免をしてもらうことについて事実上の合意を得たうえで、簡易裁判所にその合意内容を特定調停という形で確認して成立させる手続きで、2013年12月から経営者保証ガイドラインによって認められた解決手法(特定調停スキーム)です。この手続きをとれば、代表者は、破産をする必要もなく、代表者が自ら手元に置ける財産の範囲も拡がり(破産の場合は、原則最大限99万円ですが、ガイドラインによれば、代表者の年齢等にもよりますが、場合により、数百万円を手元に置けたり、華美でない自宅を残したりすることが出来ます。)、裁判所に納める費用等も安価で済み、債務者にとっては有利な解決となります。

但し、要件として、自らの財産、債務内容について全て開示をする等誠実な対応をしていることが要求されます。
したがって、債権者との交渉の際に、財産開示等で虚偽があったり、直前に財産隠しや財産移転のようなことがあったり、個人と会社の財産との区別が曖昧であるような場合は、債権者の不信を買い、また、手続き上も要件を欠くことになるので、ガイドラインに沿った解決はできなくなってしまいます。
このような場合や減免について債権者の理解が得られない場合については、代表者も自己破産や再生の申立てをして解決をしていくことになります。

最近は、代表者の連帯保証債務等につき、この特定調停スキームによる解決例が、増えてきており、これからは、このスキームによる解決が可能かどうかをまず検討することになっていくものと思います。
池田総合法律事務所では、自己破産、再生等の法的整理、ガイドラインに沿った特定調停による解決を取り扱っておりますので、会社経営が思わしくない場合には、早めにご相談して頂ければ、と思います。

(池田伸之)