法人破産について(連載第1回)

新型コロナウイルス感染症,コロナ特別融資の返済,円安,金利動向など経営環境は様々な変化があり,今後もどのような経営上の不安要素が突発的に発生するかが分からない難しい時代です。

池田総合法律事務所は,企業法務を主軸として取り扱っており,企業継続のための法的なサポート業務を日常的にご提供していますが,法人の倒産事案も相当数取り扱っています。

特に,池田総合法律事務所では,法人の破産申立だけではなく,裁判所から選任される法人破産の破産管財人も多く務めています。

今回は,破産・再生等の倒産分野にフォーカスをあてて,これから4回の連載をしていきます。

第1回は「法人破産の概要」,第2回は「代表者の破産(経営者保証ガイドラインの利用を含む)」,第3回は「法人破産申立のスケジュール,費用」,第4回は「法人の民事再生」です。

それでは,第1回は,法人破産の概要です。

 

1 破産とは

(1)破産とは

破産を簡単に説明させていただければ,会社にある財産(現金,預貯金,売掛金,不動産,機械設備その他のプラスの財産)と,会社の借金(債務)とを裁判所に明らかにして,裁判所が選任する破産管財人がプラスの財産を換価(=換金)して,破産管財人が債権者に配当という形で金銭を支払って,財産の無くなった会社を消滅させる手続です。

端的にいえば,裁判所によって,法人の債務を法人ごと消滅させてしまう制度が破産です。

(2)プラス財産の洗い出し

そこで,破産の申立てをするには,まずはプラスの財産の洗い出しをする必要があります。

実務上は,法人の2期分の決算報告書をもとに,現に存在している財産を把握して,裁判所に提出できるよう目録を作成します。

(3)債務の洗い出し

次に,債権者が誰で,債務額がいくらあるのかを把握して,これも債権者一覧表という形でまとめる必要があります。

また,債権者といっても,税金,給与(解雇予告手当も含む),銀行融資,取引先(仕入れ先など)などがありますが,法律上の位置付けは様々です。

例えば,給与を支払ってもらえなければ,労働者が生活できなくなるおそれがありますので,銀行融資や取引先などの債務に比べて,優先的に支払を受けることができると法律上定められています(ただし,未払給与の全部というわけではなく,期間的な制限はあります)。

実務上は,手持ちの現預金を確認して支払が可能であれば,いままで働いていただいた労働者の方に迷惑をかけないように給与等を支払うことを検討することになります。

(4)労働者(従業員)について

破産は,法人ごと消滅させる手続ですので,裁判所に破産を申し立てる前に労働者(従業員)は全員解雇するのが原則です。

もっとも,破産手続が始まった後に破産管財人が必要であれば,経理担当者などを一時的にアルバイト等として雇用することもありますが,いずれにしても破産申立前には基本的に全従業員を解雇します。

(5)破産申立をすることの決定

法人が破産を申し立てる場合,個人と違い,取締役などがいるので,取締役等の決議や同意が必要になります。

具体的には,

【取締役会設置会社(取締役会がある会社)の場合】

取締役会の決議が必要

【取締役会非設置会社(取締役会がない会社)の場合】

取締役全員が破産申立に同意したことが分かる同意書面が必要です。

仮に取締役が1名の会社であれば,1名が破産申立をすることを決定したことが分かる書面があれば良いですが,2名以上の取締役がいる場合には,全員の同意が分かる書面が必要になります。

ただし,反対している人や連絡がとれない場合でも,準自己破産という手続は準備されています(ただし,この場合,裁判所に予納する予納金の金額は通常に比べて高額になります)。

(6)裁判所への破産申立

取締役会等で破産申立をすることを決め,プラスの財産の目録や債権者一覧表が整った段階で,裁判所に破産を申し立てることになります。

破産を申し立てる場合には,申立をする弁護士の弁護士費用以外にも,破産管財人の費用として裁判所に一定額を予納する必要がありますが,この点は第3回で概要を説明させていただきます。

驚かれる方もいますが,破産を申し立てるにあたっては,裁判所に一定額のお金を予納する(支払う)必要があります。自らの費用で自ら法人を設立した以上,破産をするときも自らの会社を消滅させる手続の費用は自ら負担すべきだからです。

 

2 破産申立への弁護士の関与

破産申立をする場合,破産法を十分に理解したうえで,破産法上問題が無いように申立前にできる限りの準備をすることになります。

また,債権者に対する対応も必要になりますが,債権者対応は弁護士以外には難しいものです。問題無く破産手続を進めていくためには,弁護士の関与が必須です。

池田総合法律事務所では,多数の法人破産申立の実績もありますし,裁判所に選任される法人の破産管財人業務の実績も多くあり,申立てにあたってのノウハウも豊富に有しています。

法人破産の申立時期をいつとするのかは大変重要です。事業が立ちゆかないのではないか,後継者がいないが借金があるなどといった法人の廃業や破産をご検討の事業者は,切羽詰まってからではなく,早めに池田総合法律事務所にご相談ください。

(小澤尚記(こざわなおき))