災害への備え―企業にとってのBCP―
このところ日本列島に毎週のように災害が起きています。台風で激甚災害指定がなされるなど、災害への備えは台風の通り道であり、地震や津波警報がほぼ毎週なされている日本では、日常的な備えこそ大切です。
災害が起きたとき、まずは人命救助など個人が優先されますが、個人への代表的な支援策は、①災害救助法-とりあえずの衣食住の提供、②災害弔慰金の支給等-重度の障がいを負った方や死亡者の遺族への弔慰金、見舞金の支給、③被災者生活再建支援法-被災者世帯に最大300万円の現金支給です。しかし、例えば、自営業者が1階で商売をし、2階を住居にしていた場合、事業部分には支援はありません。債務を返済できない事態に至った場合、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」にしたがって処理することがルール化され、被災ローンの減免がなされます。
これに比べて企業への救済制度は殆どない状況です。平成23年3月11日に発生した東日本大震災で、中小企業の多くが従業員や設備を失ったりして廃業に追い込まれました。また、被災の影響が少なかった企業においても、復旧が遅れて、自社の製品・サービスが供給できず、顧客離れが起こって、事業縮小や解雇という事態に立ち至ったことも多く見聞きしました。なお、企業に対しては、債権の買取をして、事業を後押しすると言うことは行われていますが、事業展開は企業次第という状況で、後押しする仕組みはありません。
緊急事態はいつ発生するか予測できません。緊急事態への備えとして、自然災害、大火災、テロ攻撃などに遭遇した場合に事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続や早期の復旧を可能にするために、平時から、緊急時の事業継続のための方法や手段などを取り決めておく計画BCP(Business Continuity Plan )が最近注目されています。中小企業庁には参考サイトがあります。あらかじめ、優先して復旧すべき中核事業を特定しておく、緊急時の目標復旧時間の目安を決めておく、サービスレベルなどについて顧客と協議しておく、代替的な生産設備や仕入れ先なども協定してくことなど、参考となることが多いです。そして、BCPを策定している企業には、総合評価方式がとられる公共入札において加点されるというメリットもあります。
そこまでのことを?との印象をお持ちかもしれませんが、取締役会は、リスク管理体制も含めた内部統制システムについて方針決定を法律上求められています。従業員を帰宅困難者にしないためのルール、災害時の個人情報の取扱なども、細かいことですが、対応を求められる課題です。また、基本取引約定書などでの、災害時の対応なども、いざというときのためにどのように自社が約束しているのかなどもチェックするべきであると思います。備えあれば憂いなし!を実践したいものですが、限界をどう考えたらよいのか、法律実務家も知恵を出さなければなりません。
<池田桂子>