独禁法改正-公正取引委員会の審判制度廃止で、どう変わる?

カルテルや入札談合、不公正な取引方法の禁止などで事業活動の不当な拘束が問題となるとき、独占禁止法は、公正取引委員会が排除命令を出したり課徴金の納付命令を出したりすることがあります。こうした命令に不服がある場合に公正取引委員会による審判手続きが、従来行われてきました。行政処分をした公正取引委員会が自らその行政処分の適否を判断することには、かねて公正さに欠けるのではないかという批判がありました。

昨年12月7日に成立した独占禁止法の改正法では、審判制度は廃止され、一般の行政処分と同様に第一審は地方裁判所に委ねられることになりました。また、独禁法という専門性の高い分野ということや公正取引委員会の行った排除措置命令等にかかる抗告訴訟であることから、東京地方裁判所の専属管轄とされました。3人ないし5人の裁判官の合議体によって審理されます。
さて、公正取引委員会による排除命令等の処分がなされるにあたって、その前にどのような手続きがなされるかですが、改正法では、排除措置命令の名宛人となる当事者から口頭で意見聴取をすることが原則とされており、事件毎に指定される手続管理官(公正取引委員会の職員)が意見聴取を行います。この時、当事者は代理人を選任することができます。ここでいう代理人は、弁護士、弁護士法人、または公正取引委員会の承認を得た適当な者に限ります。
意見聴取の初回期日には、当事者は意見を述べますが、手続審査官の許可を得て審査官に対して、質問することができますし、あるいは、陳述書と証拠を提出することにより意見聴取に替えることもできます。聴取した内容は報告書にまとめられ、また手続管理官による調書が作成されます。
改正法では、公正取引委員会が認定した事実を立証する証拠の閲覧及び謄写にかかる規定が設けられました。もっとも、第三者の利益を害する恐れがあるなど正当な理由があるときには、閲覧を拒否されることもあります。
今回の改正法は、公正取引委員会の処分前の手続きについて、証拠の閲覧や謄写の規定を整備するとともに、公正取引委員会の行った処分に対しては、直截に裁判所で争うことができるようになり、大きな変化があります。<池田桂子>