環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載1

~リサイクルと廃棄物処理法~

 

1 はじめに

持続可能な開発目標(SDGs)や企業の社会的責任(CSR)などの観点から,事業活動にはより一層,地球環境との調和,環境問題への十分な取組,再生可能エネルギーなどのより環境負荷の少ない事業モデルの構築などが求められるようになってきました。

そこで,今後,不定期ですが,環境法制,環境問題,再生可能エネルギーなど,環境分野について不定期でのコラムを掲載し,企業活動のための情報を提供させていただくこととしました。

不定期コラムの第1回は,廃棄物(ゴミ)とリサイクル(再生利用)の法規制を改めて検討してみます。

 

2 リサイクルと廃棄物処理法

(1)そもそも「廃棄物」とは?

私たちが食べるために育てている牛や豚,ニワトリからはふん尿が大量にでます。

肉も魚も野菜も売れ残ってしまえば,もったいないですが,処分されることになります。

建設現場からはコンクリートなどのがれきが大量にでてきます。

工場からは金属のくずが大量に出ますし,水での処理が必要な工程があれば汚水を処理した後には汚泥もでます。

設備を更新しても,古い設備は不要なものとして粗大ゴミなどになってしまいます。

そして,これらのゴミは,そのまま使う,資源となる物を取り出す,燃やして熱エネルギーに替えてしまう,埋め立ててしまうなど,地球環境に負荷をかけながら処理されていくことになります。

 

では,そもそも廃棄物とは何でしょうか?

 

廃棄物処理法2条1項は,廃棄物を『ごみ,粗大ごみ,燃え殻,汚泥,ふん尿,廃油,廃酸,廃アルカリ,動物の死体その他の汚物または不要物であって,固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く)。』と定義しています。

また,産業廃棄物とは,『事業活動に伴って生じた廃棄物のうち,燃え殻,汚泥,廃油,廃酸,廃アルカリ,廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物』と定義されています。

 

簡単にいえば,廃棄物は『不要物』をいうことになります。

廃棄物処理法に触れる機会があれば,必ず一度は検討する「おから事件」(最高裁平成11年3月10日判決)は,(平成4年法105号改正前の条文の解釈にはなりますが)『不要物とは,自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要になった物をいい,これに該当するか否かはそのものの性状,排出の状況,通常の取扱い形態,取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決するのが相当である。』と判示し,おからを産業廃棄物としています。

この判例は,総合判断説を採用されたといわれるもので,結局,物が不要物か必要物(有価物)かは,諸事情を検討して判断するとしたものです。

 

(2)リサイクル(再生利用・再資源化・熱回収など)

では,不要物を引き取ってリサイクルする場合,それは廃棄物を引き取っていることになり,廃棄物処理法の適用を受けるのでしょうか?

例えば,火力発電所などで石炭を燃焼させるときに発生する灰(フライアッシュ)は,もともとは産業廃棄物でした。

しかし,セメントにフライアッシュを混合したフライアッシュコンクリートは,強度の増進,乾燥収縮の減少などの特長があるため,フライアッシュはコンクリートの製造工場に納入される商品となっており,国内であれば国内需要に対応する供給である限り必要物となります。

 

まず,必要物(有価物)として引き取る側が代金を支払うという取引が成立する限りにおいて,廃棄物処理法の適用はなく,一般的な売買契約などの商取引になります。

この場合,平成17年3月25日環廃産業発第050325002号は,「引渡し側が輸送費を負担し,当該輸送費が売却代金を上回る場合等当該産業廃棄物の引渡しに係る事業全体において引渡し側に経済的損失が生じている場合であっても,少なくとも,再生利用又はエネルギー源として利用するために有償で譲り受ける者が占有者となった時点以降については,廃棄物に該当しないと判断しても差し支えないこと」としています。この意味は,譲り渡す側にとって手元マイナスが生じていても,総合判断の中で手元マイナスだけでは「廃棄物」となるという考え方はとられていないということです。

他方,不要物を引き取る場合には,どうなるのかが問題となります。

そこで,昭和52年3月26日環計37号は,「排出者が不要とした物を原則として無償で引き取り,専ら再生利用のみを行っている者について,その再生利用が確実に行われると都道府県知事が認める場合は許可を要しない」とし,「再生利用の認定は,再生利用の主体,目的及び方法並びに取引関係等を特定して行う」としています。

よって,認定を受ければ,廃棄物処理法上の許可を得ずに不要物の処理を業として行うことができます。

 

3 リサイクルと企業の責任

持続的可能な開発目標(SDGs)目標12「つくる責任つかう責任」のターゲット12.5は「2030年までに,廃棄物の発生防止,削減,再生利用及び再利用により,廃棄物の発生を大幅に削減する。」としています。

まずは,自社で生じてしまう廃棄物は,適切に処理できていますか?この点から,再確認することが必要です。そのうえで,さらに何をしていくかを考えることになります。

さらに何をしていくかは,方針だけであれば,リサイクル・リユースなどのより一層の推進です。

他方,リサイクル・リユースをするうえでは,国内法としての廃棄物処理法等の環境法制の十分な理解は必要不可欠です。環境法制の十分な理解なくしてコンプライアンス経営もできません。作業手順、社内規程の整理や見直しは必須であり、また、SDGsの目標達成の具体的なプラン作りも重要です。

弁護士として企業の事業活動をサポートさせていただく中では,事業者の皆さまが環境法制を十分にご理解されていないのではと感じる場面もあります。

池田総合法律事務所では,廃棄物処理法等の環境法にもとづくコンプライアンス構築のお手伝いもできますので,一度ご相談ください。

〈小澤尚記〉