環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載4

~再生可能エネルギー~

1 はじめに~FIT制度~

太陽光発電を筆頭に,風力,水力,地熱,バイオマス発電で得られるエネルギーを再生可能エネルギーといいます。

この再生可能エネルギーについては,2012年,固定価格買取制度(FIT制度。Feed in Tariff)が導入され,再生可能エネルギー設備で発電された電気については,10年間の買取期間中はあらかじめ決められた固定価格で電力会社が買い取ることが義務づけられました。

この固定買取制度では,事業の収支が分かりやすい点なども踏まえて,従来,発電に関与することもなかった異業種事業者やインフラファンドなどが新規参入して,一定の事業規模になっていきました。

そして,様々な事業者の参入により,FIT制度により急激に再生可能エネルギーが拡大しましたが,事業者等にとっては競争なく設備さえ導入すれば予想される収益が得られるという側面があるため,再生可能エネルギー設備による発電は,電力の需給バランスとは無関係になっていました。

また,電気料金にFIT制度の原資の一部を作り出すために賦課金が課され,広く国民から費用が徴収されることになっていました。電気料金の明細書に「再エネ発電賦課金等」とされているものです。2021年度の賦課金は総額2.7兆円に及ぶ見込みとなっています。

そこで,電力市場に再生可能エネルギーを統合するための制度として,2022年4月から「FIP制度」(Feed-in Premium)が導入され,FIT制度からFIP制度に変わることとなっています。

なお,FIT制度は2009年以降に設置された再生可能エネルギー設備の固定買取期間10年が2019年から順次終了していきますので,FIT制度での固定買取はいずれ終了します。この点,誤解があるようですが,FIP制度が始まるからといって,FIT制度下での固定買取期間が短縮されるといったことはありません。あくまでご自身の設備での固定買取期間が始まった時から10年後に固定買取期間は終了します。

 

2 FIP制度

 FIP制度のもとでは,「基準価格(FIP価格)」がまず定められます。FIP制度導入当初はFIT制度の調達価格と同水準から基準価格は始まる予定です。

次に,「参照価格」が定められます。参照価格は,電力市場での取引などによって発電事業者が期待できる収入分のことをいい,卸電力市場の価格等に連動することになります。

そして,「基準価格(FIP価格)」-「参照価格」>0となれば,その差額分が「プレミアム」となり,発電事業者は売電金額にプレミアムを加えた金額の収益を得られることになります。

このFIP制度でどのようなことが起きることが期待されているかですが,発電事業者が卸電力市場の動向などに注意を払うことになるので,電力が高値で取引される需要の大きい時に電力を売却し,需要の小さい時には蓄電池などで電気を蓄え,需給バランスを意識せざるを得ないことになります。

また,FIP制度では,発電見込みの計画値と,実際の実績値とを一致させることが求められ(バランシング),計画値と実績値との差(インバランス)が生じた場合には,発電事業者はインバランスを埋めるための費用を支払うことが必要になります(FIT制度のもとでは不要でした)。

そこで,バランシングをして,電力需給バランスをも意識すると,事業者を束ねて,蓄電池システムなども導入して需給管理を行い,適時に市場取引を行うアグリケーターによるアグリケーションビジネスの活性化が期待されています。

 

3 最後に

池田総合法律事務所では環境関連ビジネスの構築の支援や助言などを行っておりますので,池田総合法律事務所に一度ご相談ください。

〈小澤尚記(こざわなおき)〉