預貯金債権に関する情報の取得手続について

1.はじめに

裁判をして判決が確定しても債務者が債務を支払ってくれない場合には、債務者の財産に対し、強制執行をして回収することが考えられます。

強制執行には、不動産、給与債権の差押えの他に、預貯金債権の差押えがあります。不動産、給与債権の差押えについては、それぞれ10月11日、10月28日の法律コラムでご紹介しました。

そこで、今回は、預貯金債権の差押えを行う際に必要な預貯金債権情報の取得手続きについてご紹介します。

 

2.預貯金債権情報の取得手続きの要件

預貯金債権情報の取得手続きとは、執行裁判所が、債務名義を有する債権者からの申立てによって、銀行等の金融機関から債務者の預貯金債権等に関する情報を取得する手続です。

申立てには、以下の要件が必要です。

(1)債務名義

裁判等の手続きを経て取得した確定判決、仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促、執行証書(強制執行受諾文言付公正証書)など、金銭債権についての強制執行の申立てに必要とされる債務名義を有していることが必要となります(民事執行法207条1項)。

(2)強制執行の不奏功

強制執行又は担保権の実行における配当等の手続きにおいて完全な弁済を得ることができなかったとき、又は知れている財産に対する強制執行を実施しても当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があったとき等、強制執行の不奏功の要件が必要です(法207条1項、197条1項)。

なお、預貯金債権等に関する第三者による情報取得手続においては、財産開示手続の前置は必要とされていません。それは、預貯金債権は処分が容易であるため、事前に財産開示手続を必要とすると、債務者がその間に預金を引き出すなどして財産を隠匿してしまうおそれがあるためです。

 

3.情報提供義務者及び提供される情報等

情報開示を求めることができる第三者は、銀行、信用金庫、農業協同組合等、我が国において預貯金を取り扱う機関です。

債権者が申立てを行う際には、対象となる銀行等を具体的に指摘する必要があります。

上記金融機関から、提供を受けることができる情報は、預貯金債権に対する強制執行等をするのに必要となる情報(法207条1項1号下段)で、具体的には、預貯金債権の種別、口座番号、及び預貯金の額です。

 

4.振替社債等

預貯金の他にも、市場性のある上場株式等については、一般に財産的価値が大きく、その換価も容易であることから、強制執行を行うに有用な財産であると言えます。

そこで、振替機関等から振替社債等に係る情報を取得するための手続きが新設されました。

申立ての要件は、預貯金債権情報の取得手続きと同様です。

上記振替機関等から、提供を受けることができる情報は、債務者の有する振替社債等の存否、並びにその振替社債等が存在するときは、当該振替社債等の銘柄及び額又は数です。

 

5.終わりに

債務名義を持っていても債務者からの支払いがされずにお困りの方、不動産、給与債権及び預貯金債権の差押えを検討されたいという方は、一度池田総合法律事務所にご相談ください。

<石田美果>