紙の約束手形の廃止方針と廃業
1 紙の約束手形の廃止方針
紙の約束手形を最近は見る機会が少なくなってきました。やはり取引の主流が預金口座への振り込みにシフトしている影響だと思われます。
そして,昨今,報道されているように,政府も全国銀行協会などの金融業界に対し,2026年に紙の約束手形を廃止することを検討するよう要請をする段階まで来ました。
今後は,電子的な約束手形の振り出しのみに限定されていき,かなり限定的な場面でのみ触れるものになっていくものと思います。
2 手形不渡りと廃業
約束手形が広く利用されていたときには,二度の手形不渡りをもって,銀行取引停止処分となり,資金繰りに窮することで,一定の資産がある状況でも破産せざるを得ないこともありました。
経営者の皆さまがあまりご存じないことですが,破産や民事再生といった廃業手続をとる場合,その手続費用を国が負担してくれることはありません。すべて会社の自己負担で資金を用意する必要があります。
そして,会社の破産であれば,裁判所はほぼ必ず破産管財人という清算処理のための弁護士を選任します。この破産管財人の費用は破産する会社が負担する必要があります。
また,会社の破産申立を,会社の代表者などが自ら行うことは現実的にはかなり困難ですので,弁護士に破産申立を依頼することになります。この破産申立をする弁護士にも弁護士費用を支払っていただく必要があります。
具体的には,債権者数や債務額にもよりますが,少なくとも150万円程度の現金がなければ破産申立をすることすらできません。
そして,約束手形の不渡りで破産等の手続に移行する場合には,まだ手元に不動産等の一定の資産があったため,申立費用や管財人費用を用意することもできました。
しかし,最近は手形取引が減少したため,経営者の方も最後の最後まで経営を維持するよう頑張る結果,いざ破産等の手続を採ろうと弁護士に相談に来るときには,申立費用すら準備できないこともあります。
3 最後に ~これだけは準備を! そして早期のご相談を!~
弁護士としては,それまで会社のために働いてくれた労働者の方に最後の給与を支払ったうえで,申立費用,管財人の費用も準備できる段階で,ご相談いただけたらと思う場面も多くあります。
いままで会社のために働いていただいた労働者の方に,最後の給与を支払って,最後まで生活を支えるために,そして破産等の手続をとることで債権者に対しても最低限の責任を果たすためにも,一定の現金が手元にある段階で,早期にご相談いただく必要があります。
新型コロナウイルス感染症の影響もあり,先が見通せない時代ですが,破産や民事再生,廃業支援などで,弁護士としてお役に立てることは多数あります。
池田総合法律事務所では,破産,民事再生等も取り扱っており,多数の実績もありますので,一度ご相談ください。 〈小澤尚記(こざわなおき)〉