財産開示期日について(連載第2回)

前回の財産開示手続の概要を踏まえて、実際の財産開示期日の流れをご説明させていただきます。

 

1 財産開示手続の申立

財産開示手続の申立てを、債務者の所在地(=住所地)を管轄する裁判所に申し立てることになります。

そのため、弁護士として必要があると判断した場合には、債務名義の債務者の住所が現在も変わっていないかを、弁護士の職権で債務者の住民票を取得して確認します。なお、債務者の住民票は、債権者が住民基本台帳法12条の3第1項に定める手続によって取得することも可能です。

債務者の住所が確認できれば、債務者の住所を管轄する地方裁判所に財産開示手続申立書を提出します。たとえば、債務者の住所が名古屋市内であれば、名古屋地方裁判所に申立をすることになります。

申立書を提出すると、その内容に不備等の問題がなければ、裁判所が後日、財産開示手続実施決定をします。

この実施決定は、債務者にも送付されますが、債務者には財産開示期日の日時と、財産目録の提出期限が通知されます(財産目録のひな形も同封されています)。

財産開示期日は、実施決定の概ね1か月後に定められます。

財産目録の提出期限は、財産開示期日の日時の10日ほど前と定められますので、事案によりますが、財産目録が手元にある状況で財産開示期日に臨むことになります(債務者から財産目録が提出されても、裁判所から自動的に写しがもらえるわけではありませんので、謄写請求をして写しを入手します)。

また、財産開示期日前に、債務者に質問したい事項をまとめて、裁判所に提出しておきます。質問事項は債務者の財産状況に関する事項に基本的に限定されます。

 

2 財産開示期日

財産開示期日の流れは次のようなものです。

・裁判官が、債務者の住所・氏名等を確認します。

・裁判官が宣誓の趣旨を説明し、債務者が正当な理由無く陳述すべき事項について陳述をせず、又は虚偽の陳述をした場合には罰則があることを告げます。

・債務者が虚偽を述べない旨の宣誓をします。

・裁判官の許可を得て、事前に提出した質問事項に沿って債権者(又は債権者代理人

弁護士)が質問をします。

質問に与えられる時間は10~15分程度ですが、事案により裁判官からもう少し時間が与えられたり、事前の質問事項とは別の質問が認められることもあります。

・債務者が、上記質問に対し回答します。

以上が大まかな流れですが、所要時間は30分程度です。

池田総合法律事務所では、小澤尚記弁護士が、財産開示期日において、債務者の身につけている装飾品の内容について質問するなど、その場で依頼者である債権者と協議しながら臨機応変に質問をしたことがあります。

 

3 財産目録の内容

名古屋地裁で債務者に送付される財産目録のひな形では、

・債務者の住所・氏名・電話番号を記載する欄

・給与・俸給・役員報酬・退職金目録として、勤務先等を記入する欄

・預貯金・現金目録として、預貯金の金融機関名及び支店名等を記入する欄

・生命保険契約・損害保険契約目録として、保険の内容を記入する欄

・売掛金・請負代金・貸付金目録として、売掛金の内容等を記入する欄

・所有不動産・不動産賃借権目録として、不動産の所在等を記入する欄

・自動車・電話加入権・ゴルフ会員権目録として、自動車の登録番号等を記入する欄

・株式・債券・出資持分権・手形小切手・主要動産目録として、株式等の内容を記入する欄

・その他の財産目録として、上記に当たらないものを自由に記入する欄

から構成されています。

そこで、例えば、勤務先が記入してあれば、給与差押えを検討することになりますし、預貯金があれば預貯金の差押えを検討することになります。ただし、財産開示手続中で財産目録を提出した後に預貯金口座から出金されている可能性は否定できません。

 

4 債務者が不出頭、宣誓拒否、又は虚偽の陳述を行った場合

債務者が、正当な理由もなく、財産開示期日への不出頭、宣誓拒否、陳述拒否、または虚偽の陳述を行った場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰が科されます(民事執行法213条1項5号、同6号)。

これにより、財産開示手続の実効性が期待できるようになります。

 

5 まとめ

財産開示手続を弁護士に依頼した方が手続の進行もスムーズですし、財産開示期日での質問についても弁護士が債務者の応答内容を考慮して、その場で随時組み替えていった方が、効率的に情報を収集できる可能性が上がります。

債務名義はあるけれど、債務者が支払わず困っている方は、あきらめずに池田総合法律事務所にご相談ください。

(石田美果)