野上陽子の摩天楼ダイアリー①

<ミセス野上のご紹介>

長年の知人、野上陽子さんは、アメリカ在住約40年。かつては米国の金融機関や日系の著名ホテルに勤務されていた御経験もおありです。現在はYoko Nogami & Associatesを立ち上げて、日本からの進出やアメリカ企業や個人のアジア向けの事業に関する調査、情報提供、諸手続きの代行などを行っています。

いろいろな経験や知識、ノウハウをお持ちなことから、私の事務所の事件についても、お手伝いいただいたことが度々あります。

時折お便りをいただいていましたが、最新のアメリカ情報がとても面白いので、私だけが読んでいてはもったいないと、ニューヨークからの便りのコーナー(カテゴリー:摩天楼ダイアリー)でご紹介することにしました。どうぞ、お楽しみください。

 

<初めてのお便り>

先日、池田桂子弁護士と話していたら、最近では、トランプ政権の下、いろいろな動きがあるという話になり、昔は、カリフォルニア近辺に日本からの進出が多かったが、どうも変わってきた様子というので、そのことについてお便りしいと思います。

カリフォルニアからテキサスへの企業の移動については、現在の人の生活が変わったためだとも言えます。元々カリフォルニアは気候が良いのでヒッピー文化の時から人が多く集まり、物価もそれなりに高いです。それで 今では企業は人件費を多く支払わなければなりません。では、隣のラスベガスの有るネバダだと、人件費は安く土地も広いのですが、水道、電気、空港などの公共施設が整っていません。元々カリフォルニアは、日本からの距離が近かったためだと思いますが、日本企業の進出があり、多くの日本からの長期滞在者がトーランスに固まり賃貸も物価も大変高くなってしまっています。カリフォルニアからテキサスに移る企業の職種は、工場などの物流企業だと思いますが、場所も確保でき、雇用も比較的楽に探せる可能性が有ることから選ばれたのだと思います。

90年代には米国内の1-800の電話サービス部門はテキサスに集中していました。それが人件費節約のためインドへ、その後ベトナムへ、今は、殆どコンピューターのチャットでされていますが、カスタマーサービスが英語の能力だけでなく、顧客とのコミュニケーション問題からカナダや各地でカスタマーサービスがされています。米国内は州により給料水準が大きく違います。

現在、ニューヨークでは日本からの長期滞在者の様子が変わって来ています。1980年代から2000年までは明らかに家族全員が移動してきて、日本人学校や日本食料品店が必要不可欠なものでしたが、今は単身赴任が多く占めています。そして永住権などのサポートは企業ではしなくなってきています。これは、1人の従業員を滞在させるのに、日本でかかる人件費の10倍以上の経費が掛かる事に危機感と永住権獲得後に退職、転職が出ているためだと思います。

米国内での仕事の仕方も大きく変わって来ていて、1990年には多くの企業がテレビ会議が普及し、今は多くの金融機関は、顧客との会議はインターネット電話、説明会もインターネットで米国中から質疑応答をするウェブカムを使います。それぞれの家や事務所に居ながらの会議が普通に行われるようになっています。

ダラスは国内何処へでも飛行機で簡単に移動が出来ますし、すでに多くの外国企業の進出が有りますので、比較的受け入れ態勢も出来ているかと感じます。

以前ダラスから2時間ほど離れたところへ行った時に、求人広告にカーボーイ募集を見た時には、さすがテキサスと思いましたし、同じアメリカでも文化や挨拶がニューヨークとは大きく違うのを改めて感じました。それから、米国の労働組合は日本と違い、時には会社をつぶす勢いが有ります。米国の隠れた歴史の中で虐げられた労働者は、今労働組合が企業を圧迫しているよ記事も見ます。

最近、米国内でどの州が住みやすいか考えてみました。税金が安く、家の価格が手ごろ、物価が安く、医療施設が整っていて、治安が良いところを探すとなかなか出てきませんが、税金が安いのはネバダ州ですし、公共機関が整っていて医療機関が整っているのは、ワシントン州です。便利なところや文化のある所はどうしても物価が高くなります。税金が安く広い家を購入しようとすると、トラックのような大きな車が必要ですし、街まではかなりの距離が有ります。

住みやすいのと企業にとってのメリットとは違いが有るかと思いますが、物価と人件費は、物の価格に直接関係のあるものですので、米国でのものづくりは、大変だと思います。トヨタは米国でしっかり根を下ろしていると感じるのは、トヨタ米国産を米国人が買うのに全く抵抗がないのでしょう。それからスバルは、米国内で最も安全で長持ち、お手頃価格としてとても人気が有ります。

シリコンバレーに陰りが出ましたのは、トランプ大統領が外国人労働者に対して、新たな移民法をなどと発表して一時大騒ぎになりました。その直後カナダが即座にカナダでは受け入れ態勢が有ると発表して、このトランプ氏の法案はどこかに消えました。優れた外国人開発者はAI産業には欠かせません。ソフト開発の小さな起業はカナダへの関心が高いのは外国人へのビザ発行のサポートだと感じます。現在中国では世界中から良い人材を受け入れています。多くの設備費と給料、恵まれた環境。条件が良いようですが、北京育ちの米国大手銀行のエグゼクティブは、給料を3倍にしてくれるし物価はニューヨークより安いけども、決して帰らないと暗い表情でした。

 

楽しい話題をまた近々ご提供しますね!  2019年秋   野上陽子

 

サイトの案内  https://www.ynassociates.net/