野上陽子の摩天楼ダイアリー⑦

「 ニューヨークは今、コロナウィルスと100万円の悪夢の中にあります 」

今年3月の自粛宣言時に街の様子を知る方法は、TVニュースやネットニュースなどの報道もありますが、なんといっても、NY州知事の30分から1時間の毎日のテレビでの報告と説明、それに加えて、州にメールアドレスを登録しておくと毎日届く州からの状況報告Eメールでした。今もメールが続けて届いていますので、何処で何が起きているか知ることができ安心出来ます。

特に、何処の地区が感染が多いのか、どのようにしたら医療従事者は安全に移動出来るか、病院のベッド数等、刻々と変わる状況がよくわかり、緊迫した状況に不安感はあるものの、自分たちは何をすべきかよく分かり有益です。

感染の有無を調べるPCR検査等検査は全て無料です。今年3月から5月までは、医療関係者、公共交通機関者、食料品関係者などどうしても生活に必要な人が優先されていましたが、5月末からは、一般市民も受けられるようになりました。

私の住んでいるアパートメントの受付担当者が感染している事が疑われ、直ぐに検査へ向かいました。アパートから徒歩10分の診療所での待ち時間は15分、48時間後にはEメールで検査結果が送られて、まずは、一安心でした。その後も気をつけていましたが、知り合いの中には死亡者が出ました。そのため、新たに気を引き締めていたのですが、昨日アパートの同じ階の隣人が、最近感染して部屋に篭っているという噂を聞きました。まだまだ油断が出来ません。

マンハッタンで起きている事は肌で感じている事しか申し上げられませんが、普段、よく見かける物乞いの人は見掛けなくなりました。実は、こうした物乞いはプロの集団です。また、その他に見かけるバックパッカーの物乞いも、今はいません。

NYの地下鉄は、24時間営業を止めて、夜中1時から5時までは停止しています。夜半は、消毒作業と地下鉄で寝ているホームレスの収容場所提供をしていますが、以前より車内が綺麗な印象を受けます。それでも、私としては、密な場所となる地下鉄は使う気にはなりません。バスはどうしても必要な時に乗りますが、乗っている人も気をつけビクビクしてしながら静かに乗ります。

ニューヨーク州では、レストランやバーが再開し店内でなく道にテーブルを出して営業しています。再開には多くの規制があり、それに従わないレストランやバーは100万円までの罰金と酒売許可を停止ないし、却下になります。営業許可の再取得は不可能に近いぐらい厳しいです。毎日新しい決まりが示され人との距離を守らないレストランやバーは名前を公表されています。今日新たに気が付いたのは、一度の罰金が1万ドル(約100万円)と書かれていて何度でも罰金が課されることです。酒の販売取扱許可書は、その日から一時停止になり、期限付きか、許可取り消しなのか、厳しい判断をされます。

その他、飛行場では住所、氏名など感染対策の為の書類を提出します。それから、高速道路でも検問なども行われています。

ニューヨーク州は、パンデミック中の州からの訪問者に対して14日間の自宅待機、従わない場合は20万円の罰金、これは他の州で逃げられないように給料から合法的にさしひかれます。このように徹底していますのは、人の命はみんなで守ろうという市民意識です。この数か月に起きた悪夢が市民に浸透しています。罰則などの規定にも市民から文句の声は上がりません。それに、マンハッタンを歩いていて全部のお店には、マスク無しはお断りの紙が貼られていて、マーケットなどはガードマンが警戒しています。それでも完全には感染を避けられませんが、他の州と比べたら本当に安全だと感じます。
取引のある銀行は、支店を再開し入り口で名前と電話番号を控え、顧客が支店内で3人以上にならないように入れ替えています。銀行員との間にはプラスチックの衝立、署名に使ったペンはあげますと言った徹底ぶりです。支店のサイズは30メートル四方です。何処に行ってもプラスチックの衝立が有ります。

また、失業が厳しくなっています。そのように感じるのは、道に座ってカードボードを掲げて座っている人を見たときでした。「仕事を失い、アパートを失い、助けてください。」と見かけたときでした。40歳ぐらいの人で、心が痛みました。アパートの滞納は5ヵ月間合法に出来ると州が発表しました。銀行は3ヵ月の無利子を発表、生命保険の支払いも連絡すれば滞納出来ると連絡がありました。滞納はいつか支払わないといけないので 将来は不安だと感じる人は多いと思います。バーやレストランが開いても、外食は控えて、酒屋やマーケットで酒類を買い、食費に気を使う生活は続いています。

米国GDPの数字がマイナス23%以下の発表になった日の株式市場は勿論マイナスから始まり、そのままだと思ったら100ドル位も高くなって終了して、不思議な感じがしました。これからのGDP発表や世界経済状況と感染状態がどのように世界の為替、株式に影響があるのか不透明です。失業者の多い職種がありますが、感染後に職種によっては募集が増えている会社もあります。宅配は明らかに何倍にも増えています。即日宅配も必要が増えていますが、書類でなく箱に入った食品と生活用品ばかりです。

まだまだニューヨークは正常になりませんが、どこよりも感染率が低く抑えられているのは事実です。感染者数は、フロリダ、カリフォルニア、テキサスがニューヨーク州を超えていますし、人口密度の少ない州は病院が少なく、感染検査も時間がかかっています。早期検査キットは、正確性に疑問が有ります。

ニューヨーク州ではサイトが有って簡単にいろいろ調べる事が出来ます。(英語だけではありません。)https://coronavirus.health.ny.gov/covid-19-travel-advisory

米国は広くニューヨークからカリフォルニアまで飛行機で5-6時間、時差が3時間あります。州により人の考え方が全く違います。ここまではっきりニューヨーク州の政策に、人種、宗教、習慣が入り混じり、独特のコロナに対する危機意識が感じられます。自粛の対応も同じです。

コロナと共に生き、コロナを乗り切るには、まだ少し時間がかかりそうですが、確実に収束は近づいていると信じて、今私にできることを、自分のため、そして隣人のために行動したいと思います。

またお便りします。

野上陽子(ニューヨーク市マンハッタン在住、コンサルタント会社を経営)

サイトのご案内  https://www.ynassociates.net/