非接触事故でも、賠償請求ができますか

交通事故等で直接加害者側の自動車等に衝突しなくても、衝突しそうになり、これを避けるために、転倒をしたりして怪我をするということはあり、特に、バイクや自転車といった2輪車はバランスを崩しやすいので、こうした事故につながりやすいものです。さて、こうした場合に、加害者側に接触によって被った被害を賠償することが出来るでしょうか。

 

判例上は、接触がなくても、加害者側の義務違反を前提に、突然の事態に対し、被害者が狼狽したり、接触を避けるために転倒して怪我をした場合等、運転者側の責任を認めています(昭47.5.30 最判)。

 

最近の裁判例でも、交差点付近で右折していた車両が、横断歩道上に近接して走行するに際し、これを避けようとして転倒して、後頭部を石垣に打ち付けて、くも膜下出血で死亡した79歳の男性のケースについて、運転者は、進行方向の安全を十分に確認し、歩行者の動静に注意して、危害を及ぼさないよう適切な方法で運転すべき注意義務に違反したとして、因果関係を認め、約3500万円の損害賠償請求を認めています(大阪高裁判決H30.1.26)。

この例では、遺族側は、右ドアミラーの接触があったと主張していましたが、ドアミラーにその痕跡がなく、歩行者の着衣の繊維片等も検出されず、接触したとする証拠が全くなかったため、第1審の神戸地裁尼崎支部は、接触したとは認められず、歩行者を動揺させるような運転をしたとする証拠もないとして、遺族側の請求を棄却したものですが、控訴審で逆転して、遺族者側が勝訴したものです。

 

接触事故と比べて、非接触事故は、類型的に事故といえるかどうかを判定する証拠が少ないことが多く、どのようにして事故が起きたのか、その経緯、運転者側に落ち度があったのか、事故と傷害等の結果等の間に因果関係があるのか等について、加害者側から争われ、任意保険等も容易に支払われないケースが多いと思います。そのため、何より証拠の保存が重要で、相手方の住所、氏名を運転免許証で確認し、警察にすぐ連絡をして、実況見分等をしてもらったり、ドライブレコーダーを保存しておいたり(相手方には保存を申し入れておく)、周囲に監視カメラがないか等も調べ、目撃者を確保するといったことが重要となってきます。

また、当たっていないことから、悪意がなくても、そのまま立ち去ってしまうケースも想定され、車両のナンバー等での特定も大事になってきます。

保険には、こうした事案も弁護士へ相談したり委託できる特約付きの保険も増えていますので、その点もあわせて、ご自分の保険もこの際点検してみてください。

(池田伸之)