養育費・婚姻費用算定表の改定と無料相談会のお知らせ

2019年12月23日、改定された養育費・婚姻費用算定表が公表されました(最高裁判所の司法研修所が作成)。

今回は、養育費・婚姻費用算定表とは何なのか、算定表の改定によって何がどのように変わったのかを説明します。また、合わせて公表された、成年年齢の引き下げが養育費の支払いに及ぼす影響についての考え方も説明します。

 

1 養育費・婚姻費用算定表の改訂について

(1)養育費・婚姻費用算定表とは

ア 養育費とは

養育費は、監護者となった親が、他方の親に対して請求する「子の監護に関する費用」のことです。

子どものいる夫婦が離婚をするときは、夫婦のどちらが子どもの監護をするかを決めますが、離婚しても親子関係が無くなるわけではありませんので、別居した親も子を扶養する義務があります(民法877条1項)。そのため、別居した親は、子と同居して監護している親に養育費を支払うことになります。

イ 婚姻費用とは

社会生活を営むには様々な費用が必要となりますが、夫婦は「婚姻から生じる費用を分担する」(民法760条)ものとされており、このような費用を婚姻費用と言います。

夫婦が別居するなどして生活費を別々に支出している場合に、例えば子と同居している方が、他方に対して婚姻費用を請求することがあります。

ウ 養育費・婚姻費用算定表の意義

養育費や婚姻費用をいくらにするかについて、夫婦が話し合って納得できる金額を決めることが出来るのであれば、その金額とすることに問題はありません。

しかしながら、そのように決めることが出来ない場合には、夫婦それぞれの収入や支出などを踏まえ、金額を決める必要が生じます。

もっとも、1件1件、個別の事情を考慮して一から金額を決めるのは、大変煩雑であり、また、当事者が金額を予測しにくいという問題もあります。そこで、平成15年、当時の統計資料などを参考に、当事者の収入や子どもの数などに応じて養育費・婚姻費用の目安を示す算定表が提案され、実務に定着してきました。これが、養育費・婚姻費用算定表です。

 

(2)算定表の改定

上記のとおり実務に定着した算定表ですが、提案された平成15年から15年以上が経過し、この間の税制等の法改正、社会情勢の変化等を踏まえ、より現在の社会実態を反映した内容にする必要性が生じました。

そこで、算定表についての見直しが行われ、この度、改定された算定表が公表されるに至りました。今後、調停や訴訟などの実務では、この算定表を基準として養育費・婚姻費用の金額を決めていくことになります。

 

(3)具体的な内容

従前の算定表と改定後の算定表を比較すると、改定後の方が養育費・婚姻費用の金額が高めに出る傾向があります。具体例でみると、以下のとおりです。

(なお、算定表はあくまで目安であり、最終的な金額は個別の事情を踏まえて決めることになりますのでご留意ください。)

<養育費>

例1 夫A(給与所得者・年収500万円)、妻B(主婦・無収入)

5歳の子が1名おり、妻Bが親権者となって子を監護するケースの養育費。

【従前の算定表】    4~6万円

【改定後の算定表】   6~8万円

 

例2 夫A(給与所得者・年収400万円)、妻B(給与所得者・年収350万円)

6歳と3歳の子がおり、妻Bが子2名の親権者となって子を監護するケースの養育費。

【従前の算定表】    2~4万円

【改定後の算定表】   4~6万円

 

例3 夫A(給与所得者・年収600万円)、妻B(給与所得者・年収600万円)

16歳と12歳の子がおり、夫Aが子2名の親権者となって子を監護するケースの養育費。

【従前の算定表】    4~6万円

【改定後の算定表】   6~8万円

 

<婚姻費用>

例4 夫A(自営業・年収600万円)、妻B(給与所得者・年収150万円)

夫婦は別居しているが離婚はしていない。3歳の子が1名で、妻Bが監護しているケースの婚姻費用。

【従前の算定表】   12~14万円

【改定後の算定表】  14~16万円

 

(4)運用についてのQ&A

Q1 私は3年前に離婚し、そのときに養育費の金額も決めたのですが、算定表が改定されたことを理由に、養育費を改定後の算定表に基づく金額に変更してもらうことはできますか?

A1 現在のところ、算定表の改定のみを理由として養育費の金額を改定後の算定表の金額に変更することはできないと考えられています。もっとも、相手が変更に応じるのであれば、変更することは可能です。

 

Q2 私は3年前に離婚し、相手に対して養育費を支払うことになりました。ところが、その後再婚し、新たに子どもが出来たため、養育費の金額を変更してもらいたいと考えています。この場合、従前の算定表と改定後の算定表のどちらに基づいて計算すればよいのでしょうか。

A2 現在のところ、養育費の金額を変更する必要が生じたと判断された場合には、改定後の算定表に基づいて計算することが想定されています。

 

2 成年年齢の引き下げが与える影響について

平成30年の民法改正により、令和4年4月1日から、民法上の成年年齢が18歳となります。

これに伴い、例えば、養育費の終期を「子が成年に達する日まで」などとした協議書や調停調書等について、養育費の終期が18歳までになるのかという問題があります。

この点について、取り決めをした時点で当事者は「成年」=20歳と認識していたのが通常であることから、こうした場合における「成年」とは、基本的には「20歳」を意味するものと理解すべきであるとの考え方が示されました。

また、養育費の支払義務の終期は子が未成熟子を脱する時期とされているのですが、従前は、その時期が成年年齢である「20歳」とされることも多くありました。この点について、成年年齢が18歳になったとしても、「未成熟子を脱する時期が特定して認定されない事案については、未成熟子を脱するのは20歳になる時点とされ、その時点が養育費の支払義務の終期と判断される」という考え方が示されました。

したがって、養育費の支払義務の終期の決め方に関して、基本的には成年年齢の引き下げはあまり影響をしないものと思われます。

 

3 無料相談会の実施

池田総合法律事務所では、養育費・婚姻費用の算定表の改訂を受けて、以下のとおり無料相談会を実施します。

離婚を検討されている方、養育費や婚姻費用の請求を検討されている方は、是非一度専門家にご相談ください(要予約)。

日時:令和2年1月23日(木)14時~16時

同日   17時~19時

同月25日(土)10時~12時

(お一人30分程度の相談時間となります)

場所:池田総合法律事務所内

<川瀬裕久>