養育費不払いによる給料差押えにはご注意を!

離婚後も未成年の子に対しては、養育費の支払い義務があります。公正証書や離婚調停で、養育費の取り決めをしたとします。離婚したことも快く思っていないのに、その後も元妻(元夫)にめったに顔を見られない子どもへの養育費なんか支払うのは嫌だと思って、元妻(元夫)が内容証明郵便で支払うように言ってきたにもかかわらず、無視して、しばらく不払いにしていました。1年近くたったある日、突然、勤務先に給料の差押え通知が届きました。さて、どうしましょう。

このような場合、申立内容によりますが、裁判所の差押え命令は、当事者の約束に基づいて、不払いの過去1年分だけでなく、子どもが成年に達する年までの将来の分についても、支払を命ずることがあります。将来はどうなるかわからないと権利濫用の主張が認められるでしょうか。残念ながら、認められる可能性は殆どないでしょう。

かつて、養育費などの継続的給付が受けられない場合には、ある程度未払い分がたまってから差押をし、さらに未払分について差押を繰り返す必要がありましたが、今では、必要性があれば、将来の継続的な給付に関しての差押が認められています(民事執行法151条の2、1項3号)。

会社の方では、結構厄介な手計算で、毎月これに対応しなければならず、元妻(元夫)が取下げしない限り、続きます。プライベートのことは仕事とは関係ないとは云いたいところですが、人事評価にも絶対に影響なし、と断言することはできないように思います。勿論、退職すれば、差押えの効力は無くなりますが、そうでない限り、約束の年限まで続きます。

給料のうち差押限度額は法律で決められています。慰謝料や財産分与の支払い請求の強制執行では、給料の手取額(税金や社会保険料を差し引いた後の金額)の4分の3の金額と33万円とを比較してみて、どちらか少ない方の金額が差押えできない金額と言うことになっています。その残りの部分が差押え可能金額となります。しかしながら、さらに注意すべき点は、養育費の差押の場合には、2分の1までと言う特例があり、一般の金銭債務の滞納時よりもより多くの金額を差押えることが出来るのです。

給与が下がれば、養育費の減額の調停や審判を申立て、これを認められた段階で、給料の差押に対して請求異議の訴えを起こします。そうでなければ、元妻(元夫)にまとまったお金を用意して将来分の支払いについて申出る等の好条件を提示して、執行を取り下げてもらうしかなさそうです。約束事を放置しておくと、養育費については、痛い目に合ってしまうので、くれぐれもご注意を!<池田桂子>