よくある誤解-有期の賃貸借契約でも借主側からは、いつでも解約出来る?

たとえば、不動産に事業用の借地権を設定し、契約期間が15年とします。この場合、貸主の方の途中解約を認める契約条項を入れたとしても、無効であり(もっとも、事業用借地権の設定には、公正証書の作成が要件で、公証人から指摘を受け、このような無効な条項は入らないでしょう。)、貸主に中途解約の権利がないことは、一般に理解されています。

 

では借主からの中途解約は、どうでしょうか。不動産の開発や仲介業に関わっている人でさえ、借主の側からは、いつでも解約の申し入れが出来ると思っている人が、結構います。これは、正しくありません。

 

15年という賃貸借の期間は、貸主だけでなく、借主も拘束するものですので、借主が中途解約するためには、それを認める契約条項が必要で、当然には、解約できません。

 

借地借家法38条6項には、居住用定期建物賃貸借につき、一定の理由があることを要件に、借主側に解約の申し入れが出来る旨規定があります。これは、賃貸借期間は、借主も拘束し、自由に解約はできないことを前提としているのです。

 

したがって、中途解約の権利を認めた契約条項がない限り解約できず、どうしても解約したいときは、残存する賃貸借期間中の賃料の支払いをする等の不利益を被ります。

 

借主側で長期の賃貸借契約をするときは、中途解約を認める条項がちゃんと入っているかどうか確認してから契約しましょう。

解約にあたって思ってもみない金額を請求されることのないように契約を結ぶときには、契約書をよく読んで下さい。わからない場合には契約書のチェックをご相談下さい。(池田伸之)