アフターコロナを見据えた働き方改革の枠組

1 厚生労働省主導による働き方改革

働き方改革は「個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革」とされています(厚生労働省HPリンク)。

このような改革が推進された背景には、人口減少と少子高齢化に伴う働き手の減少と、個々の事情に応じた働き手のニーズの多様化という大きな社会環境の変化がありました。このような変化に対応するための働き方改革のポイントは、①長時間労働と②正規・非正規労働者間の格差の見直しであり、従来の日本型雇用に内在する大きな社会問題の解決を目的としています。

働き方改革関連法は2018年に成立し順次施行され、①長時間労働是正のための規制(残業時間の上限規制、1年あたり5日の年次有給休暇の義務化、労働時間の客観的把握の義務化等)や、②格差是正のための規制(不合理な待遇差の禁止、差別的取扱いの禁止、労働者に対する待遇に関する説明義務の強化等)が進められてきました。

 

2 コロナウイルス感染拡大下の働き方の変化

そのような中で新型コロナウイルス感染が拡大し、新型コロナウイルス感染対策の必要からも働き方は大きく変わらざるを得ない状況となりました。①長時間労働の是正と②格差の是正を内容とする働き方改革を進めてきた企業は、新たに③感染拡大防止のための働き方の変化をも求められることとなったのです。

テレビのニュースなどでは、③感染拡大防止の要請への対応も含めた働き方の変化を、広く働き方改革と呼んでいることもあるようです。たとえば、リモートワークは、改革の名称にふさわしいインパクトと革新性(会社に行かなくてもいいんですか!?)を持っていますし、感染拡大防止効果だけでなく、働き方改革が目標とする多様な働き方を可能にする側面も持っていますので、若干の混乱は避けられないところです。

社会内で、各種の要請のもと働き方の変化が強く求められる状況にあり、不適切な働き方を継続することは、企業を社会的非難にさらし、企業価値を損ねることにつながりかねません。現在、企業は長時間労働と格差是正に加えて感染拡大防止にも配慮した働き方を模索する中で、新たな問題への対応を日々求められる状況にあります。

例えば、リモートワーク下での適正な労働時間管理の在り方は感染拡大防止と長時間労働の是正にかかわる新しい問題ですし、正社員をリモートワークとし非正規社員のみに出社を求めることは感染拡大防止と格差是正にまたがる新しい問題になりえます。また、リモートワークにはセキュリティ上の体制構築も不可欠ですし、リモートワークをきっかけとした働き方の変化はメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への変化を推進し、従業員の意識を変化させるかもしれません。

 

3 働き方の変化に伴う体制づくりの必要性

すでに取り組みを始めている企業も少なくないでしょう。とはいえ、時に衝突しかねないような各種の要請(法令、感染拡大防止、情報セキュリティ、従業員のマインド等)を調整して体制を構築するのは多大な負担を伴うものと思われます。

これらの新しい問題へ対応する適切な体制構築には、業務に関連する各種法令についてその趣旨にまでさかのぼった多面的かつ慎重な法的検討が必要であり、法的な専門家による関与が望ましいです。

当事務所には一般企業での勤務経験のある弁護士も在籍しております。働き方の変化に伴う各種問題について、ご相談ください。

 

山下陽平