中小事業者・小規模事業者の方々へ―「海外展開」を真剣に考えてみませんか
円安傾向や中国等のアジア地区における労賃の上昇等から、海外へ進出した日本企業が国内へ回帰してきているということはありますが、今後、たとえば、抜本的な体制を取らない限り、日本の人口が減じ(平成60年には、1億人を割り込む予想)、また、高齢化率の急速な進行と出生率の低下で、生産年齢人口は平成72年には4418万人程度と推計されています。
他方、アジア地区等の新興国は、膨大な人口を抱え、これから経済的にも大きく成長していくことは、間違いありません。海外展開は、大企業だけでなく、企業の存続をかけて、中小企業・小規模事業者においても真剣に考えるべきテーマといえます。
現在、直接輸出を行っている製造業の中小企業は、約6300社、海外に子会社をもつ中小企業も約5600社あり、非製造業の進出も増加しており、海外展開が、生産拠点から販売戦略へ、その比重を移しています。
ただ、検討するといっても、どこから手をつけていっていいかわからないし、誰と相談していいかわからない、ということかもしれません。
「日本再興戦略」が策定され、5年間で、新たに1万社の中小企業・小規模事業者の海外展開を実現する目標を立て、様々な支援体制が構築されています。
実現のためのステージとしては、
①海外情報の収集
②具体的な事業展開プランの作成
③具体的な準備の実行(人材育成、販路、商品)
④進出後の事業の安定・拡大
が考えられ、それぞれに支援策があります。
①についてはJETROのサイトから、世界各国のビジネス情報を入手することができ、各種のセミナーもあります。
②についてはJETROの簡易投資相談、中小機構の国際化支援アドバイスの制度があり(いずれも無料)、さらに進めて、具体的なマーケット、生産拠点の調査をすすめていく時には、専門家継続派遣や経営実務支援の制度があります。また、中小企業の事業活動支援のために、公的に認定されたものとして、認定支援機関もあり、この認定支援機関がご相談にのりながら、具体的な計画をすすめていくこともできます(当事務所も、この認定支援機関です)。
③については、海外展開管理者の研修、海外展示会出展サポート、商談会、ミッション団の派遣等があります。
④については、ファンドの出資事業、海外拠点での現地支援プラットフォーム等があります。
制度によっては、3分の2ほどの補助金が出るものもあり、負担の軽減がはかれます。
ネットで、「海外展開支援」で検索すると、中小企業庁、JICAなどの公的なサイトが出てきますので、そこで支援や補助金の内容を知ることができます。また、海外展開となると、種々の、また特有のリスクもあります。事例をあげながらそのリスクを細かく分析し紹介した事例を集約したものとして、中小企業海外展開支援関係機関連絡会議作成の「海外展開成功のためのリスク事例集」があります。リスクはリスクとして、どのようにヘッジし、海外展開を成功に導いていくのか、参考になります。これも、ネット上に公開されていますので、検索してみて下さい。(池田伸之)