共同親権と具体的な問題(「監護者の指定」「監護の分掌」「親権行使者の指定」)

1.はじめに

前回は、共同親権の原則的な場合についてご説明しました。

共同親権の場合、父母が共同して親権を行うべき特定の事項(進学や転居、重大な医療行為など)について、「父母の意見が合わなかったら、子どもの手続きが止まってしまうのではないか」と不安に感じる部分もあると思います。

もっとも、共同親権を選択した場合でも、共同親権とあわせて「監護者の指定」「監護の分掌」「親権行使者の指定」を行うことができます。これにより、ご家庭の状況に合わせて、より柔軟にお子様の生活環境や父母の円滑な協力体制を整えることが可能になります。

今回は、「監護者の指定」「監護の分掌」「親権行使者の指定」を行った場合に、意思決定ルールがどう変わるのかについて、具体的なケースを交えてご説明します。

 

2.監護者の指定

共同親権下であっても、父母のどちらか一方を監護者に指定することが可能です。

監護者を指定した場合、身上監護の重大な行為(住まいの選択や進学先の決定など)を含む身上監護全般について、監護者が単独で決定することができるようになります。

例えば、お子様と一緒に暮らす監護者が、生活環境を整えるために近所に引越しを検討する場合、もう一方の親の同意を待たずに速やかに判断・契約を進めることができます。

これにより、生活に密着した事項をスムーズに判断できるようになります。

 

4.監護の分掌

お子様の監護に関する役割分担を柔軟に決めるためには「監護の分掌」が有効です。どちらか一人に決めるだけでなく、父母が役割を分担する、それぞれのご家庭に最適な形での取り決めが可能です。

具体的には、期間や決定権について監護の分掌を定めることが考えられます。

例えば、「平日は父母の一方が監護を担当し、土日祝日は他方が担当する」「父母が週ごとに交互に監護を担当する」などと定めた場合、それぞれの期間内においては、身上監護の重大な行為を含む身上監護全般について、担当者が単独で決定することができるようになります。

また、「教育に関する事項は一方の親に任せ、転居や医療などの一定の事項は父母で協議して決める」と定めた場合、進学先の選択など教育に関する重大な行為を含む教育全般について、任せられた一方の親が単独で決定することができるようになります。

 

5.親権行使者の指定

特定の法律行為(契約など)に限って、あらかじめ親権を行使する者を定めておくのが「親権行使者の指定」です。

例えば、パスポートの申請の際には親権者の同意が必要となるところ、こうした特定の行為について、お子様と一緒に暮らす親を親権行使者に指定しておけば、その親が単独で手続きを進めることができます。

これにより、窓口での混乱や父母双方の署名が揃わないことによる手続きの停滞を防ぐことができます。

 

6.終わりに

共同親権は、全ての事情について父母が共同して親権を行使しなければならないという硬直的な制度ではありません。今回ご紹介したように、監護や親権行使の権限をあらかじめ整理しておくことで、父母の協力を維持しつつ、お子様の生活環境を迅速に整えることが可能になります。

それぞれのご家庭の状況に合わせ、どの部分を共同にし、どの部分を単独にするかという。最適なルールの設計こそが、共同親権を円滑に運用するためのポイントといえるでしょう。

当事務所では、法改正後の新しい家族の形に合わせた、実効性の高い取り決めをサポートしております。具体的な設計や不安な点については、ぜひお気軽にご相談ください。

(栗本真結)