違法なアップロードで高額賠償!

著作権の成立する映像を動画サイトに軽い気持ちで投稿すると著作権(公衆送信権)を侵害し、時に高額の賠償請求がなされますので、要注意です。

その一事例として、判例タイムズ1395号319頁以下に掲載された裁判例をご紹介します。

この裁判は、総合格闘技である「Ultimate Fighting Championship」大会での試合の模様を撮影・編集した映像の著作権を有する会社(原告)が、ウェブ上の動画サイトに無断で合計84回にわたってアップロードした人を相手に、著作権を侵害したとして、1000万円の請求をした事件で、満額請求が認められたものです。

原告の著作権の成立やその侵害については争いはなく(被告側は代理人弁護士がつかない、いわゆる本人訴訟ですが、弁護士がついてもこの点について争っていくことは無理でしょう。)、問題は、損害額をどうみるかという点にありました。

損害の評価はなかなか難しく、立証上困難な場合がありますが、著作権法は被害者の立証を容易にするための推定のための規定をもっています(著作権法114条、他の知的財産権に関する法律も同様の規定をもっています。)。
① 侵害者の販売数量に単位あたりの利益を掛けたもの
② 侵害者の販売等による利益金額
③ ライセンス料相当額
をそれぞれ損害と推定する規定となっています。

本件では、原告はネット配信会社と映像使用を許諾する契約をしており、ユーザーへの提供価格の60%が原告会社の取り分であったため、ユーザーへの配信料金(200円から500円)×ユーザーの再生回数×60%で計算された、4681万円余りが損害と認定されています。
原告側では、この他、信用毀損による損害として1000万円、訴訟手続のための弁護士費用として600万円の合計6281万円の損害を被ったと主張し、その一部1000万円を裁判で請求していたものです。仮に原告の方が損害を被ったとする金額全額を請求していたとしても、5000万円を超える金額が認められる可能性は高かったものと思われます。

この例では、原告の著作権にもとづく削除申立に対しても、これに応ぜず、新たなアカウントを用いるなどして1年 以上にわたってアップロードを続けてきたという事情もあり、高額化したということはあります。しかし、デジタル・ネット環境下、簡単な操作で知らず知らず のうちに著作権侵害に至ってしまう危険性があり、そのことによる損害の発生が莫大なものでも、物理的な損害と違って目に見えず、その重大性に気づかないこ とから、びっくりするような損害賠償責任が発生することにもなりかねません。

コピーアンドペーストが常態化したデジタル・ネット社会に警告を与える裁判例のご紹介でした。(池田伸之)