廃棄物処理業の許可取消しと刑事処分

1 はじめに 

環境に関心が高まっている今日,廃棄物の処理については,法律はかなり厳しい規制をしています。

しかも,廃棄物処理法は,時代の状況に応じて,法律による各種規制が積み上げられていった経緯もあり,非常に難解で読みづらい法律となっています。しかし,強力な規制をかけている法令ですので,根気よく読解していく必要があります。

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廃棄物処理①

廃棄物(ゴミ)には,事業活動に伴って生じる産業廃棄物と一般廃棄物があります。

そして,廃棄物全般の関する規制をしているのが,廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)です。

廃棄物処理法では,一般廃棄物は市町村に処理責任がありますが,産業廃棄物の場合は,排出事業者が自らの責任で適正に処理する責任を負っています。

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書店の逆襲~万引き防止プロジェクト~

先日,渋谷の3書店が,各店の顔認証システム付き防犯カメラで割り出した,万引き犯の顔の画像を各店で共有するプロジェクトを発表しました。

顔情報は個人情報ですが,防犯カメラで入店客の顔情報を防犯目的で収集することは通常行われており,個人情報保護法上問題ありません。入店客の同意も不要です。

しかし,①万引き犯の顔画像(万引き犯にとって,自分の犯罪に関わる重大情報)が対象であること,②3書店間で共有されることを考えると,本プロジェクトは防犯カメラの通常の利用の範疇を超えている気がしますね。

本プロジェクトは,個人情報保護法のハードルをどのようにクリアしたのでしょうか。

 

①万引き犯の顔画像を集めることについて

個人情報保護法には,「要配慮個人情報」という概念があります。これは,もし人に知られたら,本人への不当な差別や偏見につながるため,取扱いに特に注意すべき個人情報をいいます。

要配慮個人情報は,取得する段階で本人の同意を取らなければいけません。そして,「犯罪の経歴」に関する情報は,要配慮個人情報に該当します。

そうであるとすれば,万引き犯の顔画像は「犯罪の経歴」に関する情報=要配慮個人情報ではないか,本人の同意を取らずに集めてはいけないのではないかとの指摘がありえます。

しかし,「犯罪の経歴」は前科,即ち有罪判決を受け確定した事実を指すため,単なる顔画像は,万引き犯のものであってもこれにあたりません。

そのため,万引き犯の顔画像を集めること自体は,同意がなくても可能です。

 

②3書店間で共有することについて

 A書店で取得した万引き犯Xの画像を,B書店やC書店に共有することは,形式上,「個人情報の第三者への提供」として,個人情報保護法上,提供することの同意を本人(X)から得なければならない行為です。

そうであるとすれば,3書店間で自由に共有することはできないようにも思われます。

しかし,共有する相手・共有する情報・利用目的を特定し,予め見やすい位置に掲示する,ホームページ内のすぐたどり着けるページに掲載するといった処置をとることで,同意が不要になります。実際,本プロジェクトの3書店は,店内にこれらの項目を大きく掲示しています。これにより,3書店は,万引き犯の画像を自由に共有できます。

以上のとおり,本プロジェクトは,個人情報保護法上問題ありません。

 

しかし,たとえ法律上問題なくとも,本プロジェクトには,顧客の警戒感や違和感といった事業遂行上無視できない課題がありますし,情報漏洩した場合の影響も大きいです。類似のプロジェクトを実施するにあたっては慎重な検討を要すると思います。実施を検討されている方はもちろん,個人情報保護法に不安のある方はお気軽にご相談ください。

<藪内遥>

知財調停始まるー知的財産権に関する紛争解決の場としてご利用を

今年秋(令和元年10月1日)から知的財産権に関する調停手続きが始まります。特許、商標、著作権などの知的財産権をめぐる紛争の解決手続きは、訴訟及び仮処分の手続きが中心ですが、裁判所関与のもと、その手続きの中で、和解で終了することも多いものです。紛争当事者の間では、訴訟が裁判所に提起される前に、交渉が行われていることも少なくありません。そうした実情をみますと、知財に関する調停手続きという、話合いにより解決策を見出していく手続きの効用も多いに期待できるところです。

 

新たな運用は、東京地方裁判所と大阪地方裁判所です。原則として3回の調停期日のうちに、争点や証拠の評価などについて、専門的な知見を持った調停委員会が一定の見解を示すことで、解決策を探ります。

手続きは、調停申立を受けて、相手方が第一回期日までに争点についての実質的な反論を行い、裏付ける証拠を提出します。申立から6週間程度で第一回期日を予定しているようですから、かなり迅速な手続きを想定していると言えます。第三回期日までに調停委員会は当事者に対して争点についての心証や調停による解決可能性について口頭で提示するという手続きの流れです。TV会議の利用ももちろんあります。

調停委員会は、知財部の裁判官と弁護士・弁理士などの調停委員により構成されます。場合によっては、裁判所調査官が関与することもあります。

 

知財調停のメリットとして、専門性や迅速性のほかにあげられるのは、柔軟な解決策が期待されること、当事者以外の者に公開されないことなどがあげられます。

もっとも、管轄の合意に基づき、利用することになります。

 

さて、同様な紛争解決機関として、既に、東京、大阪以外にも裁判外紛争解決手続き(ADR)の一種として、日本知的財産仲裁センターがあります。愛知県弁護士会も日本弁理士東海支部と協力して、開設しています。多いに利用価値があり、大阪、東京に出向かなくともよいという意味で、便利です。申立に関する費用も低額、定額です。こちらは、管轄合意がなくとも、申立は可能であるという点でも、申立のハードルが低いという印象があります。

知的財産に関する紛争は多岐にわたります。商標類似や先使用の問題、著作権侵害の問題、営業秘密の不正取得、特許権侵害や特許権の帰属に関する問題、ライセンス料に関する争いなど、これらに限定されない幅広い紛争解決にご利用ください。<池田桂子>