商標について 4 ~商標とフランチャイズ契約~

1 はじめに

3回にわたって、商標の制度や判例について説明してきました。今回は、商標権の保護が重要な役割を担う一例として、フランチャイズ契約を取り上げます。

 

2 フランチャイズ契約と商標

フランチャイズ契約とは、フランチャイザー(コンビニチェーンの本部をイメージしてください)がフランチャイジー(コンビニ店舗の各店長さんをイメージしてください)に対して、特定の商標等を使用する権利を与えるとともに、フランチャイジーの事業や経営についてノウハウを提供して指導や援助を行い、それらの対価をフランチャイジーがフランチャイザーに支払うことを内容とする契約です。

フランチャイジーは、フランチャイズ契約によって、自身のサービスや商品にフランチャイザーの商標を付けることが許されます。フランチャイザーの知名度、信用力、集客力をフランチャイジーが利用するうえで商標は重要な機能を担います(自他識別機能、出所表示機能、品質保証機能、広告宣伝機能などについては、第1回の記事を参照ください)。一方でフランチャイザーは、自身の知名度、信用力や集客力を維持しなくてはなりませんから、商標の価値・ブランドイメージを維持するためにフランチャイジーに強い統制・コントロールを及ぼす必要があります。

そのため、フランチャイズ契約の中には商標権の使用に関する詳細な条項が置かれます。具体的な条項としては、商標権がフランチャイザーに帰属することの確認に始まり、使用目的の限定、使用方法の遵守、改変の禁止、第三者による侵害・違反事実の通知義務、フランチャイズ契約終了後の使用中止や原状回復、違約金の定めなどです。

以上のように、フランチャイザーにとって、その知名度等を適切にフランチャイジーに利用させるためには、商標権は使い勝手のいいツールです。フランチャイズ展開を検討する事業者は、早めに商標登録をしておくことをおすすめします。次項では、商標登録を怠ったままフランチャイズ展開を進めることのリスクについて説明します。

 

3 商標登録を怠った場合のリスク

フランチャイズ展開が始動したばかりの段階では、商標の出願を念頭に置いていないケースもあるでしょう。商標権の出願・登録を怠ったままでいると、別の商標登録を得ている第三者から、「同一の商標」や「類似の商標」などとして警告を受け、商標の使用差し止めや損害賠償請求を提起されるおそれがあります。

そのような場合、様々な反論が可能でしょうが、費用や労力を投じる必要がありますし、こちらの商標の使用が別の商標権を侵害していると裁判所に判断された場合には、商標権者から商標使用権の設定をうけて対価を支払って従前の商標の使用を続けるか、従前の商標の使用を諦めなくてはなりません。フランチャイズ展開が進んだ段階でそのような事態に到れば、チェーン全体の損害は大きなものとなります。商標登録をしないままフランチャイズ展開を進めることは事業にとって大きなリスクです。

フランチャイズ展開を考えるならば、商標登録は避ける事のできない必須のステップです。まず、自身の商標と類似する商標がないかの調査を行い、次に第三者の商標権の侵害がなければ商標出願の手続を進めます(商標登録手続は第2回でも説明しましたので参照ください)。類似性の判断は、判例などを元に検討する必要があるので、専門家に依頼した方が確実です。

また、商標登録に際しては、将来の事業計画を検討しておくことも必要です。例えば、飲食店の場合、役務商標(サービスマーク)だけで足りるようにも思われますが、将来、商品の販売(テイクアウトや冷凍食品)をも視野に入れる場合には商品商標の申請が必要な場面もあり得るでしょう。どの区分で申請するか等についても、専門家のアドバイスを受けるべきだと考えます。

 

4 おわりに

池田総合法律事務所・池田特許事務所では、商標を利用したフランチャイズ展開などのビジネススキームについての法的サポートもさせていただいております。商標登録や知的財産を中心としたビジネス法務についてご相談がありましたら、池田総合法律事務所・池田特許事務所までご連絡ください。

 

山下陽平

 

 

 

商標について 3 ~商標・不正競争に関する近時の裁判例の紹介~

1.「マツモトキヨシ」-音からなる商標登録(知財高裁 令和2年8月30日判決)

商標権の改正により、平成27年4月から「音からなる商標」その他の新しいタイプの商標出願も認められるようになりました。ドラッグストアの「マツモトキヨシ」を運営する会社がテレビコマーシャルでの例の「マツモトキヨシ」を含むフレーズを「音からなる商標」として申請したところ、特許庁は、これは、「人の氏名を含む商標」であり、使用にあたって、その人の承諾も得てないので、商標法4条1項8号に該当し、登録できないとしたため、知財高裁で争われたものです。

判決は、テレビコマーシャルやドラッグストアでの使用の結果、ドラッグストア「マツモトキヨシ」の広告宣伝(CMソングのフレーズ)として広く知られている取引の実情を踏まえ、「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音から、通常、容易に連想、想起するものは、ドラッグストアの店名、企業名としての「マツモトキヨシ」であって、普通は、「松本清」「松本潔」「松本清司」等の人の氏名を連想、想起するものとは認められないとして、商標法4条1項8号に該当するという特許庁の審決を取消しています。極めて常識的な判断だと思います。

このほか、音からなる商標としては、ラッパのマークの大幸薬品、半導体メーカーのインテル社等皆さんもCMで耳にしたことがあるものが商標として認められています。

このような新しいタイプの商標はブランド戦略上も大きな役割を果たしていくことが期待されます。

 

2.「無印良品」のユニットシェルフのデザインは、不正競争防止法により保護されるか(平成29年8月31日 東京地裁判決)

不正競争防止法は、他人の「商品等表示」として周知性のあるものと同一、類似の表示を使用する等して、他人の商品、営業と混同を生じさせる行為を「不正競争」の1つとし(同法第2条1項1号)、被害者に、その使用の差止、損害賠償請求の権利を与えております(同法3条、4条)。

工業製品のシンプルなデザインについては、それが商品の機能上、不可避な形態であり、また、ありふれた形態として、「商品等表示」に該当するということが、認められるケースがあまりない中、このケースは、それが認められた例外的なケースです(末尾に、一部の商品の外観の写真を付けてあります)。

複数のパーツを組み合わせて使う棚をユニットシェルフといいますが、無印側が、カインズのユニットシェルフの形態が自社製品と似ているとして、不正競争防止法に基づき販売差し止めを請求した訴訟の判決です。

無印側は、同社のユニットシェルフが6つの顕著な特徴をもつデザインとなっていることを主張し、このデザインは、需要者の間で無印良品のものとして周知であると主張をしたものです。

カインズ側は、その6つのそれぞれの特徴につき、強度等を維持するための不可避な形態である、ありふれた形態であり無印以外の事業者もユニットシェルフのデザインを備えた商品を製造、販売しており、無印良品のみがその形態を長年独占して使用してきた事実はなく、周知性はないと主張しています。

これに対して、判決は商品のデザインを考える場合、6つの形態それぞれではなく、組合わせた全体のデザインとして、ありふれているかどうか等を検討すべきであり、本件商品は、全体としてまとまり感のあるものとして、顕著な特徴のデザインであるとして、その類似品の製造、販売をカインズの不正競争と判断したものです。

無印良品が長年積み重ねてきた、簡素かつ機能性に注目してきた商品展開が評価されたものと思われます。

ひょっとしたら裁判官は、無印良品のファンだったかもしれません(笑)。

 

3.卸売、小売業者は、メーカーのつけた商品名を変更できるのか(令和4年5月13日 大阪高裁判決)

車輪付き杖の製造元として、「ローラーステッカー」の商品名でこれを販売していたメーカー(個人)が、これを仕入れた卸売業者が、「ハンドレールステッキ」との商品名を付して梱包箱の元のシールの上に新しい商品名のシール等を貼付け、卸売、又は小売を行っていたことに対し、新しい商品名を貼付したうえでの商品販売の差止と損害賠償の請求をした事例です。販売途中でもとの商品名につき、メーカーの商標登録が認められたことから、登録前は、不法行為、登録後は商標権の侵害を理由とする請求という形となりますが、判決はいずれも請求を棄却しております(原判決も同様)。

判決は、メーカー等との合意等特段の事情や公的規制のない限りは、当初の商品名をそのまま生かすことも、あるいは、より需要者に訴えることのできる商品名に変更したり、あるいは、より商品の内容を適切に説明しうる商品名に変更して販売することも許される、としています。

そのうえで、メーカーがブランドとしての統一を図る等の必要があれば、販売に際して、その旨の合意を得れば足り、そのような合意がない場合には、卸売業者、小売業者が常に当初の商品名によらなければならないと解すべき理由はない、としております(このような合意等が存在した場合には、これによって、メーカーに損害を生じさせた場合は、不法行為が成立すると解する余地があるとしています。)。

また、登録商標付の商品を商標権者から譲渡を受けた卸売業者が譲渡の過程で商標を剥離抹消し、さらに異なる自己の標章を付して流通させる行為は、商品の出所を誤認混同するおそれを生じさせるものではなく、その行為を抑止することが商標法の予定する保護の態様とは異なり、登録商標の剥離抹消行為等が、それ自体として、商標権侵害を構成するとは認められない、としています。

確かに商標権の侵害に関する商標法の規定をみても、商品等に付された登録商標を剥離、抹消、変更する行為は商標権の侵害とは定められておりません。

意表をつかれるような論理構成で、商標権の使用、商標権の侵害・保護のあり方を考えるうえで、参考となる裁判例です。

以上

(弁護士 池田伸之)

無印良品の商品

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カインズの商品

環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載10

~廃棄物に関する新型コロナウイルス感染症対策ガイドラインの改定~

 

1 特定管理廃棄物に指定された感染性廃棄物について

 廃棄物処理法により特別管理廃棄物に指定された感染性廃棄物(人が感染し,または感染するおそれのある病原体が含まれ,もしくは付着している廃棄物またはこれらのおそれのある廃棄物)は,環境省の「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」に基づき処理される必要があります(https://www.env.go.jp/content/000044789.pdf)。

 

2 環境省「廃棄物に関する新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」の改定

昨今の新型コロナウイルス感染症の影響により,新型コロナウイルスが含まれていたり,含まれているおそれのある廃棄物が大量に発生しました。

こういった新型コロナウイルス感染症関係の感染性のある廃棄物は,医療機関だけではなく,宿泊療養施設でも発生しますし,介護施設や家庭,事業所でも日々発生しています。

環境省の「廃棄物に関する新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」 (https://www.env.go.jp/content/900532873.pdf)が令和3年6月に一部改訂されています。

ここでは,

①家庭,事業所及び宿泊療養施設

家庭,事業所及び宿泊療養施設から排出される感染者の生活系廃棄物(マスク,使用したティッシュ,使い捨ての食器,オムツなど)は,感染性のある廃棄物ですが,医師等が医業等を行う場所から排出されるものではありませんので,廃棄物処理法に定める感染性廃棄物が排出される施設には該当せず,感染性のある廃棄物であっても廃棄物処理法上の感染性廃棄物としての処理が義務づけられてないことが明確化されています。

もっとも,事業所及び宿泊療養施設から排出される廃棄物は事業系一般廃棄物または産業廃棄物には当たりますので,排出事業者は適切に処分をする必要があるのは,廃棄物一般と同様です。

②医療関係機関等

医療機関や検査機関等から排出される,注射針などの医療器材,カテーテル類等のディポーザブル製品,ガーゼ,オムツ等の衛生材料については,廃棄物処理法上の感染性廃棄物にあたるとされていますので,医療関係機関等の感染性廃棄物の排出事業者は,通常の感染性廃棄物を扱う際と同様に,廃棄物処理法の処理基準に従わなければなりません。

 

3 最後に

以上のとおりですが,その時々で新たに発生する廃棄物関係の問題についても,廃棄物処理法や環境省等の通達をもとに,排出事業者も処理業者も適切に対応していく必要があります。

池田総合法律事務所では廃棄物処理関係の支援や助言なども行っておりますので,池田総合法律事務所に一度ご相談ください。

〈小澤尚記(こざわなおき)〉

商標について 2 ~商標登録手続き、費用の概要~

事業者や新たに起業される方から、「商標登録はした方が良いのですか」という相談を受けることがあります。

そこで、本コラムでは、4回にわたって、商標について取り上げたいと思います。

 

第2回は、商標登録手続や費用の概要を説明します。

 

1 商標登録手続

(1)手続きの流れ

 

(2)手続の大まかな期間

審査期間は通常の商標登録出願であれば、目安として10か月程度(出願する分野や国際出願かなどの事情により前後します)が必要です。

また、拒絶理由通知があった場合には、それに対応するために更に時間を要します。

 

2 費用

商標は、自社の商品・サービスと他社の商品・サービスを区別する機能を果たすものです。

そこで、商標登録出願に際しては、商品・役務(サービス)を分野別に分類した「区分」(第1類から第45類まであります)ごとに、自社のマークなどを登録して権利を得ることになり、権利を得たい区分ごとに出願料や登録料を特許庁に納付する必要があります。

具体的には、

・出願料 3,400円+(8,600円×区分数)

・登録料 32,900円×区分数(10年分の一括納付として)

がかかります。

また、池田総合法律事務所・池田特許事務所では、電子出願をしていますが、もし書面で手続をする場合には、

・電子化手数料として 2,400円+(800円×書面のページ数)

を特許庁に納付する必要があります。

例えば、指定商品・役務を『3区分』として、商標権を得たい場合には、

・出願料

3,400円+(8,600円×3区分)=29,200円

・登録料

32,900円×3区分=98,700円

となり、特許庁に納付する費用として合計127,900円がかかります(電子化手数料は省略)。

なお、池田総合法律事務所・池田特許事務所がご依頼を受け、代理人として商標登録申請をする場合には、所定の報酬・実費をいただきます。報酬・実費についての詳細はお問い合わせください。

 

3 先行商標調査

商標登録しようと考えている商標案を考えた場合、「1」の商標登録手続よりもまず、他人が既に同一・類似の商標を登録しているかを調査する必要があります。

厳密には、マークなどの商標が類似し、かつ、先行登録されている商品・役務が類似するものが先に商標登録されている場合には、商標案は商標登録される見込みがありません。

また、すでに商標案の利用を始めている場合には、登録されている商標権を侵害していることになりますので、速やかに商標案の使用を中止すべきという判断に至ります。

したがって、商標を登録しようと考える場合には、登録手続よりも先行商標調査に費やす時間の方が多いことが一般的です。

 

 

以上が、商標登録手続と費用のおおまかな説明になります。

商品やサービスの提供にあたり、商標が大きな意義・効果をもっていることは、多くの事業の成功例からも分かります。

池田総合法律事務所・池田特許事務所では、商標を利用したフランチャイズ展開などのビジネススキームについての法的サポートもさせていただいております。

商標登録や知的財産を中心としたビジネス法務についてご相談がありましたら、池田総合法律事務所・池田特許事務所までご連絡ください。

 

※以上は令和4年(2022年)8月16日時点の情報です。実際には特許庁の最新の手数料額等を確認する必要があります。

(小澤尚記(こざわなおき))

商標について ~商標とは~

事業者や新たに起業される方から、「商標登録はした方が良いのですか」という相談を受けることがあります。

そこで、本コラムでは、今回から4回にわたって、商標について取り上げたいと思います。

 

第1回は、商標とは何か、というテーマで、商標制度の概要を説明します。

 

1 商標とは

商標とは、事業者が、自己の取り扱う商品やサービスを他の事業者のものと区別するために使用するマーク(識別標識)のことです。

例えば、テレビにはメーカーのロゴがプリントされていることが多いですが、テレビの購入を考えている人は、ロゴを見ることで、そのテレビがどのメーカーが製造したものなのかすばやく認識をすることができますし、街角でゴールデンアーチ(「M」のような形をしたマクドナルドのロゴ)を見かけると、そこにファーストフードレストランのマクドナルドがあることがすぐにわかります。

 

2 商標の機能

上記のとおり、商標は、自社の商品・サービスと他社の商品・サービスと区別する機能を果たしますが、商標の持つ機能はそれだけではありません。

例えば、私たちは、あるメーカーのロゴがついたテレビを見たときに、「このメーカーの製品だから安心だ」と考えて購入することがあります。これは、事業者が商品やサービスの提供を通じて消費者の信用を積み重ねることにより、商標自体に「信頼できる」「安心」といったブランドイメージがついてくるという例です。このように、「同一の商標が使用される商品・サービスの品質が同一であることを示す機能」のことを品質保証機能といいます。

商標には、それ以外にも、出所表示機能(同一の商標が使用される商品・サービスの出所が同一であることを示す機能)や宣伝広告機能(商標が多く使用されることにより、需要者に記憶され、商品・サービスの需要を拡大・喚起する機能)があるといわれています。

 

3 商標の保護

商標は様々な機能を有することから、商標を他人に無断で使用されると、事業者は、その商標から得られたはずの利益を他人に奪われることになります。そのため、商標を保護する必要性が生じます。

その必要性から、一定の要件を満たす場合に、商標を保護することを定めているのが、商標法です。商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的と」しています(商標法1条)。

 

4 商標法で保護される要件

(1)商標法で保護される商標とは

商標法における「商標」とは以下の要件を満たすものをいいます(商標法2条1項)。

「人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。

①業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの

②業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)」

このように、商標法上は、単なる「標章」ではなく、「標章」とそれを使用する商品・サービスを組み合わせたものを保護の対象としています。

(2)保護を受けるための要件

商標法上の保護を受けるためには、特許庁に商標登録出願をする必要があります(商標法5条)。特許庁では、出願された商標が以下のような登録できない商標に当たらないかを審査し、いずれにも該当しない場合に登録査定を行い、登録料が納付されると、商標権の設定登録を行います。

①自己の商品・役務と、他人の商品・役務とを区別することができないもの

②公益に反する商標

③他人の商標と紛らわしい商標

(商標の出願・登録については、次回コラムで詳しくご説明します。)

 

5 商標登録の効果

商標登録がなされると、権利者は、登録の際に指定した商品(指定商品)又は指定したサービス(指定役務)について登録商標を独占的に使用できるようになります。

権利を侵害する者に対しては、侵害行為の差し止め、損害賠償等を請求できます。

 

6 商標権の存続期間

商標権の存続期間は、設定登録の日から10年で終了します。ただし、存続期間の更新登録の申請をすることによって、何度でも更新することが可能です。

 

以上が商標制度の概要となります。

次回は、商標登録手続きやその際にかかる費用について説明します。

 

(川瀬 裕久)

大家さんが知っておきたい、賃貸経営トラブルへの対処法(連載・全6回)~第6回~

入居者(借主)が亡くなった場合の法的対応はどうしたらよいか?

 

 アパート経営をされている大家の場合、借家人が亡くなった時には、どのような法的な処理が必要となるでしょうか。

 賃借権も財産的権利の一つですし、また、家財道具も借主の所有していたものですから、勝手な処理はできません。亡くなった人の相続が開始していますので、遺言があれば、それに従い、なければ、借主の法定相続により遺産分割により最終的に相続する人が決定するまでは、相続人が複数いれば準共有という状況にあたります。

 借主が死亡する前に生じていた未払いの賃料支払い債務は、可分債務として当然に分割されて、共同相続人が各自の相続分に応じて支払うことになります。また、死亡後に部屋を明け渡してもらえない状況が続けば、共同相続人それぞれに対して、債務の不可分性から、全員に対して、相当期間を定めた催告や契約解除の意思表示をすることになります。死亡後の賃料は不可分債務として、全額をそれぞれに支払い請求することができます。

 また、相続人全員に賃貸借契約の解除もしくは解除の意思表示をすることになります。

 

 賃貸借契約では、借主が死亡しても、賃貸借契約は終了しません。従前の経過で借主に賃料の滞納があれば、解除事由があるといえますが、そうでないとすれば、死亡によって解除とはなりませんので、相続人の把握に努めるとともに、賃貸借契約を継続するのか否かを確認する必要があります。

 

 相続人の調査を行い、相続人の契約の継続か解除かの意向を確認します。

 相続人が夫婦の場合は、契約の継続を望まれることもあるでしょう。相続人がいない場合でも、内縁関係にある人や事実上の養子の関係にある人で同居していた場合には、同居者に賃貸借契約の賃借人の地位が承継されることがあります(借地借家法36条1項)。この場合、賃貸人としては、配偶者等に承継されることを前提として、賃貸借契約の権利義務を扱う必要があります。承継する人を確認し、承継する契約内容を確認しておかれた方が望ましいといえます。

 

 入居者が高齢者で一人暮らしという場合、入居者の死亡によって、孤独死による片付け等が進まず、近隣からの苦情も心配されるケースもあると思います。まずは、入居者の家族として知りえる人や連帯保証人に連絡を取り、連絡が取れなければ、警察に連絡をして、現場確認(安否確認)をします。現場確認は、家族等の立ち合いを求め、それが求められない場合は警察に立ち会ってもらいます。貸主だけで室内に立ち入ることは避けましょう。

 遺体の引取り、さらには、室内の清掃や汚損箇所の修復などの原状回復の作業を早期に実施し、作業を進めるにあたっての見積もりなども場合によっては取って、関係者に納得してもらいつつ、進める必要があります。

 ケースによって御心配事も異なると思いますので、気軽にご相談いただけるとよろしいかと思います。

 

 池田総合法律事務所では、こうした事件を多く取り扱っておりますので、賃借人が死亡して、契約関係の後始末等でお困りの家主様は、是非、御相談下さい。

   <池田桂子>

環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載9

~アップサイクルと廃棄物処理法~

 

1 「アップサイクル」とは

アップサイクルは,捨てられるはずだった製品に新しい価値を与えて,元の製品よりも価値が高いモノを生み出すことを言います。

リサイクル(再循環)は,例えばポリエステルからできているペットボトルを粉砕してフレークやペレットといった原材料に一度戻し,食品トレイや繊維などに再生させることですので,元の製品よりも価値が高くなるものではないという点で,アップサイクルとは異なります。また,例えばマテリアルリサイクルの場合は,原材料に戻す過程でエネルギーを投入する必要もあります。

これに対し,アップサイクルは,例えば履かなくなったジーンズからバッグを作ったり,繊維の端材を組み合わせて衣服にしたり,木っ端の木材を組み合わせて家具や日用雑貨にする場合などがあります。いずれも捨てられるはずだった製品に,ジーンズであれば風合いのある生地という新しい価値が備わったバッグが生み出されています。

このアップサイクルの概念は,SDGsの理念にリサイクル以上によく当てはまるものです。ごみは,実は宝物に代わるサスティナブルな次の一手になる可能性があります。その実例も続々と現れています。

 

※「ダウンサイクル」という概念もあります。例えば,古くなったタオルを雑巾にするという場合は,元の製品に新しい価値は特に与えられておらず,一般的にタオルよりも雑巾の方が価値が低いと捉えられることが多いので,ダウンするサイクルになります。

 

2 廃棄物処理法での「廃棄物=不要物」

では,「捨てられるはず」だった製品に新しい価値を与えるアップサイクルについて,廃棄物処理法はどのように適用されるでしょうか?

廃棄物処理法は「廃棄物」とは,『ごみ・・・(中略)・・・不要物』とされており(2条1項),不要物=廃棄物となり,そもそも廃棄物とは何かが良く分からない規定になっています。

そして,有名な「おから」判決(最判平成11年3月10日刑集275号499頁)は,『「不要物」とは,自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要になった物をいい,これに該当するか否かは,その物の性状,排出の状況,通常の取扱い形態,取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決するのが相当である。』としました。

この判例は,おから等を処理して飼料を生産する事業をしていた被告人が,乾燥機の故障などで廃棄物処理法上の許可を得ていた工場での乾燥処理が追いつかなくなり,無許可で工場を新設しておからの乾燥・熱処理を行っていたところ,無許可での産業廃棄物処理業として刑事裁判に至った事案です。

この事案では,最高裁は「おからは豆腐製造業者によって大量に排出されているが,非常に腐敗しやすく,本件当時,食用などとして有償で取り引きされて利用されるわずかな量を除き,大部分は,無償で牧畜業者等に引き渡され,あるいは,有料で廃棄物処理業者にその処理が委託されており,被告人は,豆腐製造業者から収集,運搬して処分していた本件おからについて処理料金を徴していたというのであるから」として,おからが「不要物」にあたり,「産業廃棄物」に該当するとしました。

この最高裁の考え方を『総合判断説』と言います。

そして,実務的には,取引価値の有無が大きな判断基準であると捉えていることが多いと思われます。

 

3 アップサイクルと廃棄物処理法

もっとも,おから判決が示した総合判断説も,総合判断である以上,不要物=廃棄物であるかどうかは時代とともに変わります(判決でも「本件当時」とされています)。

アップサイクルの素材となる製品等を入手する場合,捨てられるはずだった製品である点では事業者にとって不要になった物ではあり,不要物にあたる可能性はあります。

しかし,新しい価値を加えるアップサイクルの素材として利用するのであれば,廃棄物処理費用を別途支払って処理をする必要もなく,無償での引き取りであっても取り引きをする価値があることになるので,事業者の意思を考えれば,「不要物」にはあたらないとも十分に考えられますし,そのように考えることがSDGsなどの現代の価値観により適すると評価できます。

そこで,基本的にはアップサイクルの素材を引き取って,加工をし,新しい価値を与えることに廃棄物処理法の適用は無いと考えられます。

 

4 最後に

以上のとおりですが,アップサイクルとして廃棄物処理法の適用を受けないのか,受ける可能性も無いのか,法的なリスクは無いのかなどについては慎重な法的判断が必要になることは十分に考えられます。

池田総合法律事務所では廃棄物処理関係の支援や助言なども行っておりますので,池田総合法律事務所に一度ご相談ください。

〈小澤尚記(こざわなおき)〉

大家さんが知っておきたい、賃貸経営トラブルへの対処法(連載・全6回)~第5回~

今回は、賃貸建物が老朽化した場合に、賃借人に退去を求めていくための手続きについて説明します。

賃貸借契約が長くなるとともに、不動産は老朽化していきます。適切に修繕を重ねても、最終的に建物の老朽化は避けられません。あまりに老朽化が進むと、台風や地震などで建物が倒壊したり損壊したりするリスクが高まります。賃貸建物倒壊や損壊によって賃借人や近隣住民や歩行者が怪我をした場合、賃借人との賃貸借契約や、土地の工作物の所有者責任(民法717条1項)にもとづき、損害賠償請求を受けることになりかねません。

あまりに老朽化が進んだ建物を賃貸することは、そのような法的リスクがあります。貸主の立場としては、老朽化した建物について賃貸借契約を適時に解約できれば良いのですが、実際には老朽化を理由に一方的な解約ができることはほぼありません。

 

その理由の一つが、賃貸人の修繕義務(民法606条)の存在です。修繕によって、建物が使用可能であるのであれば、修繕を施す必要があります。一方で、大修繕を要し莫大な費用がかかる場合まで、賃貸人が必ず修繕しなければならないというわけではありません。

とはいえ、そのような場合でも、やはり一方的な解約はできません。借地借家法28条で借家契約の解約の申し入れに正当事由が必要とされているからです。この正当事由には、相応の立退料の支払いも考慮要素となります。これは、生活の基盤たる住居を明け渡すことが、賃借人にとって重大な不利益にあたることを考慮し、相当の補償がなされなければならないためです。

したがって、賃借人に老朽化に基づく立ち退きを求めるには、老朽化の事実を前提として、相応の立退料を提示することが必要になります。なお、賃借人が話し合いに応じない場合には訴訟を提起する必要がありますが、裁判でも同様に、老朽化が進んでいることと、相当の立退料を支払うことを証明する必要があります。賃貸借契約を解約する「正当な事由」があるかが裁判の争点となり、判決では、立退料の金額が定められ、その支払いと引き換えに立ち退きが命じられることとなります。

 

なお、立退料の金額は、一律に決まるわけではありません。賃貸人側の事情と賃借人側の事情が両方考慮されるからです。たとえば、取り壊しの必要性のほか、従前からの賃貸借契約の履行状況(修繕の有無や賃料が低額に過ぎないか、賃料滞納がないかなど)が考慮されますし、賃借人が商売をしているような場合では営業補償などが立退料として考慮される余地があります。とはいえ、倒壊の恐れがあるほど老朽化した建物を住居として利用している場合には、あらたな住居で生活ができる程度の立退料として、引っ越し費用や敷金などの費用と一定期間の差額家賃などが一応の目安になるでしょうか。

 

以上述べたように、老朽化を理由とした立ち退きは様々な要素が考慮され簡単ではありません。また、妥当な立退料を算定するにも複雑な要素を考慮する必要があります。あまりに低額な立退料を提示すれば借主の態度も硬化するでしょうし、一方で借主から高額な立退料を請求されることもあります。

当事務所には立ち退き交渉等に経験豊富な弁護士が在籍しております。老朽化に伴う立ち退きに関しても池田総合法律事務所にお気軽にご相談ください。

 

山下陽平

 

 

大家さんが知っておきたい、賃貸経営トラブルへの対処法(連載・全6回)~第4回~

前回は、家賃の滞納が発生したときに、どのような手順を踏んで回収を進めていくべきかについてご説明しました。

今回は、家賃の回収が出来なかった場合に、借主に明渡しを求める方法についてご説明します。

 

1.賃貸借契約の解除

(1)借主に明渡しを求めるには、まずは占有(建物や部屋を使っている状態のこと)の根拠となる賃貸借契約の解除をすることが必要です。

そこで、内容証明郵便で借主に対し、「〇年〇月〇日までに未払賃料〇円を支払うこと、支払いがない場合は、改めて通知することなく、債務不履行により賃貸借契約を解除する」旨を通知します。

内容証明郵便は、文書の内容、差出人、及び名宛人を公的に証明するためのものです。これ自体に特別な法的効力はありませんが、後に裁判等紛争に発展した場合には、有効な証拠となります。内容証明郵便が借主に配達されたことを証するため、送付の際には配達証明付にしておきます。

(2)上記内容証明郵便で設定した期限までに借主から支払いが無い場合は、借主に対し、賃貸借契約解除を理由に明渡しを求めることになります。

借主に直接明渡しを求めても退去をしない場合には、裁判を起こすことになります。

裁判をした場合にかかる期間は、借主が争ってこなければ3か月程度で判決が出る場合もありますが、通常は半年~1年程度かかります。

裁判では、明渡しに加え、未払いの賃料と明渡しまでの賃料相当損害金の支払いを併せて請求することができます。

 

2.強制執行による強制退去

裁判で、明渡しを命じる判決が出た場合は、借主は自分から退去をする場合が多いと言えます。これは仮に退去を拒んだとしても、後述する強制執行の手続があり、最終的には退去を拒むことが出来ないからです。

仮に借主が出ていかない場合、判決があるとはいえ、貸主が実力で借主を追い出すことは出来ません。このような行為は自力救済といい、違法な行為であり、民事上の損害賠償の対象となるだけでなく、刑事上も罪に問われる可能性があります。

借主を適法に退去させるには、訴訟手続とは別に強制執行手続が必要となります。

強制執行は、裁判所に申し立てて行います。裁判所の執行官は、借主に対し指定の期日までに明渡しをするよう求める催告書を送付します。借主が指定の期日までに明渡しをしない場合、執行官が家具、家財などを撤去し、鍵を交換することで、強制的に明渡しを実現します。

強制執行にかかる費用は、原則として貸主が負担することになります。執行官や業者の人件費、出張費、家財家具の運搬費など様々な費用がかかります。

 

3.以上のとおり、借主に明渡しを求めるには、法的手段が必要となり、時間も費用も費やすことになります。

借主が任意に立ち退かない場合には、その後の手続きも見据えたうえで、段階的に手段を講じていく必要があり、早めの弁護士への相談が有効です。池田総合法律事務所は、このようなご相談にも対応しておりますので、お困りの際には、是非ご相談ください。

(石田美果)