家族法の改正で、これからの「家族」の行方は?
令和6年5月に民法の家族法の一部が改正されました。父母の離婚後も子供の利益を確保することを目的として、親権・監護権の決め方や養育費に関するルールなどが大きく変わります。離婚後の共同親権が認められ、父母に改めて、親としての権利や義務を自覚してもらうことが求められます。今後、社会的にも大きな影響があると予想されます。2年以内の施行を予定していますので、家庭裁判所をはじめ、関係機関では、施行に向けて、研修やマニュアル作りの準備に追われています。
主な改正点は、以下の通りです。
1 親子関係に関する基本的な規律
父母の責務の明確化と親権の性質の明確化
2 親権・監護権に関する規律
父母の離婚後の親権者の定め / 親権行使のルールの整備 / 離婚後の子どもの監護に関するルールの定め
3 養育費に関する規律
養育費の請求権の実効性を高めるための改正-先取特権の付与
法定養育費制度の創設
裁判手続きによる父母の収入資産状況の情報開示義務
4 親子交流に関する規律
別居中の取り決め / 裁判手続きにおける試行的な実施 / 親以外の第三者との交流ルール
5 養子に関する規律
養子縁組がされた場合の親権の明確化
未成年養子縁組及び離縁の代諾に関するルール
6 財産分与に関する規律
期間制限は2年から5年へ / 考慮要素の明確化 / 裁判手続きでの財産状況の情報開示義務
7 夫婦間の契約の取消を定めた規定の削除
8 裁判上の離婚の事由のうち、民法770条1項4号、強度の精神病に罹患し見込みがないことの削除
等です。
少子化の進行や男女ともに子育てに関わることが当たり前となってきている風潮などを背景に、子どもへの関心は高まっており、子の養育の在り方は、改正に当たって、特に注目されてきました。また、日本は子どもの権利条約に批准したのが遅く(196ケ国中158番目)、児童虐待や子どもの貧困などをはじめとする日本の状況から国内外からの様々な指摘を受けてきました。
今回の改正審議の過程では、諸外国が共同親権の法制をとっているのに対して、日本が離婚後父母のどちらかに親権者を決めなければならないという単独親権を巡って、激しい議論もありました。昨今社会問題となっているドメスティックバイオレンスや子どもに対する虐待等を受けている事案への対処にかえって悪影響を与えはしないかとの論点もありました。
共同親権に舵を切って、親権行使の方法もルール化されますと、離婚後といえども、父母は、監護に関する日常的な行為(食事や日々の習い事等)や子どもに急迫の事情(手術がその例)がある場合には単独で親権を行うことになると思いますが、急ぐ必要のない転居等で父母の意見が対立するような場合、調停や審判で親権行使者を指定する事件や、期間や事案に応じた監護権の分担をする事件などの、選択肢が増えるだけ調停・審判事件の増加も予想されています。
また、厚生労働省が行った調査では、日本では、養育費を受け取っている母子家庭は3割に満たないのです。改正法では、養育費の取り決めをしなくても、暫定的に一定額の法定養育費を請求し、差し押さえることができるようになります。もっとも、具体的には父母間の個別事情に依ります
大きく変わる家族法、これから、何回かに分けて、解説をしていきますので、お読みいただければと思います。
<池田桂子>