身元保証は必要?約束するのなら契約を見直しましょう!

春は就職の季節。新しいスタートでいろいろな書類を会社に提出することが求められます。求められたら提出するのが当たり前という意識が雇う側にも雇われる側にもあり、従来の慣行をそのまま続けているということも少なくないと思います。

 

気を付けていただきたいものの一つが身元保証契約書です。企業が採用した被雇用者の身元を第三者である身元保証人に保証させる書類です。身元保証人が被雇用者の経歴や素性に問題がないか、万一、被雇用者が会社に損害を与えた場合に被雇用者と連帯して賠償責任を負うことを約束する文面になっています。

このような場合、多くは親や兄弟が保証人になることが多いと考えられます。会社によっては、身元保証人を両親等一定の関係にある親族に指定する場合もあると聞きます。

 

身元保証契約に関する法律では、保証期間は5年が限度、保証期間を定めなければ期間は3年。契約の更新が可能ですが、保証期間や内容に変更があればそれを保証人に遅滞なく通知しなければ責任を問えないと規定されています。契約の更新を通知された保証人はそれ以降の契約を解除することができます。

 

また、2020年4月に改正された民法では、保証人が支払いの責任を負う金額の上限額を定める必要があります。連帯保証人の保護強化を目的に、極度額(上限額)の定めのない連帯保証は契約自体が無効とされることになりました。身元保証契約においても、今後は保証の上限額を定めておかなければならないことと解され、注意が必要です。ひな型を用意しておられる場合には、連帯保証条項の見直しをしましょう。

 

賠償の上限額ですが、仮に1億円と定めて身元保証を交わしても、起きた事象について、業務上の横領のような従業被雇用者(従業員)の側に責任が明確にあるような場合はともかく、事故等の多くは、雇用者(会社)側に過失はなかったのか、従業員となった社員の仕事の変化や状況など一切の事情を検討すべきことが多く、身元保証契約を締結する時点で、具体的な金額の定めをしたから、それで足りるということにはならないものです。実際、身元保証書を交わしている事案でも、多額の請求額が要求された場合に、裁判所が情状酌量して減額を命じた(認容額において)裁判例もあります。

被雇用者に支払われる給与額を考慮した現実的な上限を一つの目安として、例えば月給の12ケ月分といった具体的な内容を念頭に置いておくべきではないでしょうか。1億円というような法外な上限額を定めたとしても実質的にみて上限額を定めたことにならず無効とされる余地もあります。

 

以上のような諸点を前提として、身元保証を交わす意味はどこにあるのかですが、若い従業員が、例えば、精神疾患を発症したといった場合には、将来のことも考えて、身元保証人がいれば、休職や退職をめぐる話し合いにおいて身元保証人が重要な役割を果たすということを期待することができると考えられます。金銭保証の意味合いよりも人物保証としての意義を考えれば、身元保証を得ておくことは、それなりの意味はあるものとも思います。しかし、ネットなどで本人の素性など個人情報もある程度確認できる時代ですから、従来の慣行だからそのまま続けるというのではなく、身元保証を約束する意味があるか否かを、今一度検討していただきたいものです。

また、従業員の身元保証に関しては、就業規則にも定めて、従業員に周知しておかれるとトラブル防止にもつながると思います。                                                         <池田桂子>

情報管理-個人情報保護法改正と情報セキュリティ-

顧客のニーズの変化をとらえて、うまく新商品やサービスに反映させていくためにも、企業にとって、個人情報を含むデータの分析、利活用は重要です。また、データ主体の権利利益を害さないよう、安全かつ慎重なデータの取扱いが企業に求められます。

現行の個人情報保護法は、情報の利活用に関する施策の見直し、個人権利保護の拡充等の観点から、改正がされ(令和2年度)、令和4年4月1日に全面施行の予定です。

本ブログでは、令和2年度改正個人情報保護法の改正点をいくつかピックアップしてご紹介します。

①「仮名加工情報」概念の新設

「仮名加工情報」は、他の情報と照合しない限り特定個人を識別できないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報とされています。氏名や個人識別符号の削除、別情報への置換等が加工の態様として想定されています。

元の情報との容易照合性が排されない限り、原則として仮名加工情報も個人情報に該当します。そのため、安全管理等の個人情報の取扱い一般に課される義務は、仮名加工情報についても課されます。他方、漏洩等セキュリティインシデントが発生した場合の個人情報保護委員会(政府から独立した機関)への報告義務、個人からの開示請求等の権利行使の対象からは除外されています。

そして、仮名加工情報には、事業者の内部利用に限定する、個人の識別行為を行わないという制限がありますが、加工前の個人情報を取得した際の利用目的とは異なる新たな利用目的に利用できるというメリットがあります。例えば、特異な値が重要な医療分野での研究や、当初の利用目的を達成した情報を将来的な統計分析のために保管しておくうえで、仮名加工情報の利活用が期待されています。

②提供先で個人データにあたることが想定される情報の第三者提供の制限

個人データ(データベースを構成する個人情報)の第三者提供にあたっては、本人の同意を得る等の規制がありますが、「個人データ」への該当性は、提供元の事業者にとって個人データに該当するかどうかで判断されています。

ところが、令和元年、リクルートキャリア(提供元)が、顧客企業(提供先)において就活生個人を特定可能であることを知りつつ、就活生の内定辞退率データ(提供元にとっては個人データではない)を顧客企業に提供していたことが問題視されました。

そこで、今回の改正では、提供元で個人データに該当しなくても、提供先で個人データとなることが想定される情報については、提供元は、提供先において本人から当該情報を個人データとして利用することの同意を得ていることを、提供先に対し確認することとされています。

③漏洩等の報告等の義務化

これまで、漏洩等が発生した際の個人情報保護委員会への報告は努力義務にとどまっていましたが、改正により報告が義務化されます。加えて、本人への通知義務も義務化されます。

④利用停止等の個人の請求権の行使要件緩和

これまで、本人が、事業者にその個人データの利用停止、消去を請求するには、事業者が不正取得をした場合等に制限されていました。

しかし、改正により、事業者がデータを利用する必要がなくなった場合、前述③の漏洩等の通知を受けた場合、本人の権利・正当な利益の侵害の恐れがある場合(例えば、事業者が、本人から配信停止依頼があったにもかかわらず繰り返しDMを配信している場合)等も、利用停止、消去請求の対象になります。

⑤開示請求があった場合の開示方法の見直し

本人が事業者に対し、自身の個人データの開示を求めるにあたり、開示の方法(電磁的記録の提供による方法その他個人情報保護委員会規則で定める方法)についても本人が指示できることになります。

⑥オプトアウト規制強化

一定の手続(第三者提供されるデータの項目等の本人への予めの通知や公表等)をとることで、本人の同意なしに個人データの第三者提供を可能にすることをオプトアウトといいます。

要配慮個人情報についてはオプトアウトにより第三者提供できないとされています。

更に、改正により、不正取得した情報のオプトアウトによる第三者提供、オプトアウトで取得した情報を再びオプトアウトにより第三者提供することが禁止されます。

⑦越境移転の規制強化

外国(EU、英国除く)にある第三者(自社グループの外国法人も含む)に個人データを提供する場合は、オプトアウトを利用できず、本人の同意を得なければならないとされています。

更に、改正により、事業者は、本人の同意取得に際し、当該外国における個人情報の保護に関する制度、当該外国にある第三者が講じる個人情報保護のための措置の内容といった情報を本人に提供しなければならないとされています。提供するべき情報として、当該外国の国名、個人情報保護制度の有無・概要、当該外国にある第三者のプライバシーポリシー等が想定されています。

今回の個人情報保護法改正をうけ、改めて、取り扱っている情報の棚卸し、今後社内で想定される情報の利活用の態様の整理、漏洩等セキュリティインシデント対応の体制整備、開示請求・利用停止等請求対応の体制整備、社員教育の資料の見直しをお薦めします。お困りの事業者様はぜひ池田総合法律事務所にご相談ください。

<藪内遥>

スタートアップの資金調達について

1 VB(Venture Business)、「ベンチャー企業」は和製英語で、英語では”startup company”, “startup”と呼ばれ、どちらかというと、最近では日本でも「スタートアップ」という言葉が主にIT業界を中心に使用されるようになっており、その差は明確にされないことが多いように思われます。ベンチャーは新規の起業が想起されることが多いのですが、起業だけでなく既存の大企業が新たな取り組みに挑戦することもその範疇に入ります。

新たな市場分野の開拓、新規の雇用の創出、新たな技術やビジネスモデル(イノベーション)の創出、特に、ビジネスモデル(イノベーション)の創出に関しては、規制や業界の常識を覆すことが必要であり、企画力・実行力が重要になってきています。

 

2 新型コロナウィルス禍で難しさが増したという声もありますが、2020年4月から12月の会社設立件数は前年比で微減でした。スタートアップの1つの目標であるIPO(新規株式公開)市場は結構活況を呈しており、20年のIPOは、3月4月には延期した企業もありましたが、19年を上回っています。

スタートアップ時の資金調達方法として、まず考えられるのは、大別して、

① 自社の既存資産を基に資金調達する「アセット・ファイナンス」・・・土地や建物が生み出すキャッシュフローや、売掛債権などを裏付けに資金調達する手法

② 銀行借入や債券発行による「デット・ファイナンス」・・・一定の金利を支払い、返済期日まで資金を借り入れる方法

③ 株式の発行による「エクイティ・ファイナンス」・・・株式を発行して資本の調達を行う方法

その他、最近では

④ クラウドファンディングー自らのアイデアをネット上でプレゼンテーションして賛同者を募り資金援助を得る方法

⑤ 補助金や助成金の活用―地域の貢献や雇用創出などを要件として、中小企業対象の操業助成金や非正規雇用労働者を正社員化した場合のキャリアアップの促進助成金など。年度ごとに制度が変更されること多いと思われますので、要件に注意。

があります。

資産の乏しいスタート時に①は難しく、②は差し入れる十分な担保がある場合や事業のキャッシュフローの蓋然性が高い場合に可能であり、信用力の高まった上場ベンチャーではよく活用されています。③の株式発行は、デット・ファイナンスのように返済義務がない分、資金の出し手である投資家の期待するリターンは高くなります。

 

3 上場企業となれば、③のエクイティ・ファイナンスは、大きく「公募増資」「第三者割当増資」「新株予約権による資金調達」の3つに分類することができます。

ア公募増資は、上場企業が証券会社を通じて行う資金調達です。特徴は証券会社が株を引き受けてくれるとすぐに資金の調達が実現する点です。国内の公募増資では合理的な事業計画に基づく厳格な資金使途の設定が求められることや、将来のM&A資金を今確保しておきたいというニーズには活用が難しいという点に留意する必要があります。

イ特定の第三者に株式を割り当てる第三者割当増資は、割り当て可能な第三者というのはそう簡単には見つかりませんし、割当先からはどのようなシナジーが見込めるのかや今後の経営権をどうするかなど、さまざまなポイントを検討する必要があります。

ウ近年よく使われる新株予約権による資金調達は、第三者に新株予約権の割り当てを行い、割り当てを受けた第三者が新株予約権を直前の株価に基づいた行使価格で行使することで上場企業が資金を調達する手法です。この手法の特徴は、公募増資や第三者割当増資とは違い、資金調達が一定期間を通じて行われる点です。上場ベンチャーにとっては資金調達が一度で完了しないデメリットがある一方、株価に連動する形で調達額も変動するため、将来成長を見込んでいる企業にとっては、株価が上昇する局面であれば、同じ株数であってもより大きな資金調達が可能になるというメリットがあります。調達のタイミングは慎重に行う必要があります。

 

4 非公開会社新株発行における新株発行の手続きの概要について、整理しておきたいと思います。

募集事項の決定には株主総会の特別決議が必要で、総会の1週間前までに株主に対して招集通知を送付しますが(ただし、全員の同意があれば、招集手続は不要)、非公開会社では取締役に委任することが可能で、株主総会決議から1年以内に払込期限を設定します(会社法200条)。

ベンチャー企業が株式を用いて第三者から資金調達をする場合、実際には新株発行を行うことを決定する時点で、誰が何株を引き受けるかが決まっていることが通常です。簡略化された、募集事項及び割当先の決定→出資の履行→変更登記といった手続で進めることが可能です。総数引き受け契約を締結する場合には、株主総会の決議を省略(または株主総会の特別決議に基づく取締役会決議)を行い、同日払い込みを行えば、1日で新株を発行することも可能です(会社法205条など)。

このような場合、引受人と会社の間で、募集株式の総数引受契約書を交わしておきます。

また、経営への関与を行うのかなどについて、バリエーションを付けるため、種類株式を発行することも考えられます。

なお、株式など有価証券の募集については、金融商品取引法の規制を意識する必要があります。もっとも、①特定の投資家のみを相手方とする特定投資家私募や、②適格機関投資家のみを相手にする場合(プロ私募)、③50名未満の者を相手方とする少人数私募は例外として定められていますので、ベンチャー企業の場合、③の例外を利用して金商法の開示規制を受けないこととする場合が多いものと思われます。

副業としてスタートアップ起業すること、会社の別部門としての立ち上げなど、いろいろなスタートがあると思います。業種や規模に応じてということになりますから、ご相談ください。

<池田桂子>

事業再構築補助金について

1 はじめに

中小企業庁が,令和3年3月から中小企業等事業再構築促進事業として事業再構築補助金制度を開始しました。

新型コロナウイルス感染症の影響により,業態変更,事業再構築をする必要に迫られている事業者にとっては,資金的な手助けになる制度です。

事業再構築補助金の制度を利用するには,経営革新等支援機関の関与が不可欠ですが,池田総合法律事務所には経営革新等支援機関の認定を受けた弁護士が複数在籍しておりますので,一度ご相談ください。

 

2 事業再構築補助金の主要申請要件

①申請前直近6か月間のうち,任意の3か月の合計売上高が,コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少

②事業再構築指針に沿った新分野展開,業態転換,事業・業種転換等を行う

③認定経営革新等支援機関とともに事業計画を策定する

※補助金額が3000万円を超える案件は金融機関も参加して策定する

 

3 補助額

(1)中小企業

通常枠:補助額100万円~6000万円 補助率2/3

卒業枠:補助額6000万円~1億円   補助率2/3

※卒業枠は,中小企業から中堅企業へ成長をする企業向けの特別枠(400社限定)

(2)中堅企業

通常枠:補助額100万円~8000万円 補助率1/2(4000万円超は1/3)

グローバルV字回復枠:補助額8000万円超~1億円 補助率1/2

※グローバルV字回復枠は,グローバル展開を果たす事業等向け

 

4 中小企業・中堅企業の範囲

(1)中小企業の範囲

①製造業その他 資本金3億円以下の会社or従業員300人以下の会社・個人

②卸売業    資本金1億円以下の会社or従業員100人以下の会社・個人

③小売業    資本金5000万円以下の会社or従業員50人以下の会社・個人

④サービス業  資本金5000万円以下の会社or従業員100人以下の会社・個人

(2)中堅企業の範囲

中小企業の範囲に入らない会社のうち,資本金10億円未満の会社(現在,中小企業庁で調整中)

 

5 補助対象経費

基本的に設備投資を支援する補助金ですが,建物の建設費,改修費,撤去費,システム購入費,新事業開始に必要となる研修費,広告宣伝費,販売促進費も対象

※専門家経費も補助対象となります。

 

6 事業計画の策定

合理的で説得力のある事業計画を,認定経営革新等支援機関と協議しつつ定める策定する必要があります。

 

7 補助金の支払時期

他の補助金・助成金等も後払いが多いですが,事業再構築補助金も基本的に補助事業期間(1年程度)の後の実績報告・確定検査の後に補助金が支払われます。

従って,資金繰りに余裕のある段階で,早期に補助金を利用するのであれば,認定経営革新等支援機関と相談して,補助金の利用を検討する必要があります。

 

8 最後に

新型コロナウイルス感染症により需要が瞬間蒸発する,あるいは人の行動様式が変化したことにより,従来のビジネスモデルでは限界に直面している企業・個人事業主も多いことと思います。

今後の企業としての生き残り,再成長のために,国の施策で利用できる施策は利用し,事業を再度軌道に乗せ,社会に貢献し続ける企業・個人事業主でありつづける努力が必要となります。

池田総合法律事務所には経営革新等支援機関の認定を受けている弁護士も複数おり,弁護士のみでは対応できない点についても,他士業等とも連携をとって業態転換への協力させていただくことも可能です。

廃業等も一つの選択肢ですが,事業再構築補助金の利用等をして業態転換等を図ることを検討されている企業,個人事業主の方は,一度,池田総合法律事務所にご相談ください。

〈小澤尚記〉

廃業の前に事業承継の検討を!

中小企業は、我が国の企業数の99%を占め、2020年には、中小企業経営者の主要な年齢層が66才前後となると言われています。また、あるシンクタンクの2016年に公表した調査では、60才以上の経営者の半数が廃業を予定し、その理由として、後継者不在を挙げる経営者が3割近くとなっています。

他方、廃業の理由として、「当初から自分の代でやめようと思っていたから」という回答が最多数の回答で、実に、4割近くにも達しています。実際、会社の資産を売却して、従業員の退職金や金融機関からの借金を支払って多少でも残っていればよし、と考えている経営者の方もいらっしゃいますが、こうした手法は、最後の最後に考える方法で、一旦立ち止まって、事業を生かして誰かに承継してもらうことも考えられてはどうでしょうか。

従業員や仕入れ先等、会社の周囲にはそれで生活を支えている関係者も多く、また、特別な技術やノウハウをもつ場合に、これを消滅させてしまうことは、社会的にも損失というべきです。

事業の承継というと、株式を承継させて代表者を交代することを考え、自分の子ども等を対象にその可能性をさぐってみるという、親族内での承継が典型的ですが、それに尽きるものではありません。従業員による承継M&A等による社外の事業体への承継といった手法もあり、それぞれにメリット、デメリットがあります。また、事業承継を円滑に進めるために、法律が改正、整備され、種類株式(議決権制限種類株式、取得条項付種類株式等)を利用した方法、後継者の株式取得による税負担をなくしたり、他の親族からの遺留分行使に一定の枠をかけることが出来る制度等が用意されています。

また、最近では、信託を利用した事業承継の方法も利用され、先代経営者や後継者の意向にそった財産や経営権の移転が可能となっています。こうした中小企業の事業承継をサポートする支援機関も広がっており、また、中小企業庁  の肝入りで、「事業引継ぎガイドライン~M&A等を活用した事業承継の手続き~」という手引きも公表されており、一人で0から考える必要は全くありません。

何から手をつけてよいかわからないという方もいらっしゃいますので、まず自社の分析を第三者に行ってもらうのはいかがでしょうか。分析をデューディリジェンスといいますが、自社を客観的に捉えられます。

池田総合法律事務所では、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験があるとして国の認定を受けた支援機関(認定支援機関といいます。)の資格を有する者が複数名所在し、こうした中小企業の事業承継についても、税理士、公認会計士等の専門士業とも連携して業務を行っておりますので、お気軽にご相談下さい。また、当事務所のホームページにも、「事業承継」を特集した記事もありますので、こちらもご参考にして下さい。

https://ikeda-lawoffice.com/law_cat/business/)(池田伸之)

 

「最近の正規・非正規の格差解消をめぐる判例」

日本国内の非正規就業者は、年々増加傾向にあり、2020年までには約2165万人まで増えましたが、昨年は、新型コロナウイルス感染拡大によって経済が低迷したことにより減少に転じ、同年8月時点では2070万人になりました。

経済が低迷すると、弱い立場の労働者が雇用の調整弁として扱われ、解雇や雇止め等により、苦境に立たされることになります。働き方が多様化する中、公平な待遇が求められるところです。

このような中、正規・非正規の格差解消をめぐる最高裁判決が、2020年10月13日に2件、同月15日に3件出されましたので、ご紹介したいと思います。

 

(1)まず、日本郵便(東京、大阪、佐賀)の契約社員らが、正社員との待遇格差について争った3つの裁判(下記①~③)では、主に「扶養手当」「年末年始勤務手当」「夏期冬期休暇」について争われました。

最高裁は、正社員と契約社員の労働条件の相違が労働契約法旧20条にいう不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては、個々の労働条件が定められた趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当であるとの判断基準を示した上で、これらすべてについて、格差は不合理であると判断しました。

①令和2年10月15日第一小法廷判決(令和元年(受)第794号、第795号)

本判決は、「扶養手当」について、従業員の生活保障や福利厚生を図り、扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて、その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられるため、同手当の目的に照らせば、正社員と本件契約社員との間に扶養手当にかかる労働条件の相違があることは、不合理であると判断しました。

②令和2年10月15日第一小法廷判決(令和元年(受)第777号、第778号)

本判決は、「年末年始勤務手当」について、多くの労働者が休日として過ごしている年末年始に、業務に従事したことに対し、その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有するものであるとして、その手当を支給する趣旨は時給制契約社員にも当てはまるとして、時給制契約社員に同手当を支給しないことは不合理であると判断しました。

③令和2年10月15日第一小法廷判決(平成30年(受)第1519号)

本判決は、「夏期冬期休暇」について、業務の繁閑にかかわらない勤務に従事する契約社員については、正社員と同様に、夏期冬期休暇を与える趣旨が妥当するとして、夏期冬期休暇にかかる労働条件の相違を不合理であると認めました。

 

(2)つぎに、東京メトロ子会社の契約社員、及び大阪医科薬科大の元アルバイトが、正社員との待遇格差について争った裁判(下記④~⑤)では、主に「賞与」「退職金」について判断がなされましたが、最高裁は、いずれも正社員と契約社員等との業務内容に違いがあることを重視し、不合理であるとは認めませんでした。

④令和2年10月13日第三小法廷判決(令和元年(受)第1190号、第1191号)

本判決は、「退職金」について、職務遂行能力や責任の程度等を踏まえた労務の対価の後払い的性質や、継続的な勤務等に対する功労報償等の複合的な性質を有するものであり、正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から、正社員に支給することとしたものと言えるため、契約社員に支給しないことも不合理であるとまでは言えないとしました。

⑤令和2年10月13日第三小法廷判決(令和元年(受)第1055号、第1056号)

本判決は、「賞与」について、正社員と契約社員で業務の内容は共通する部分はあるものの両者の職務の内容に一定の相違があったことは否定できないこと、人事異動の可能性の面から、両者の職務の内容及び配置の変更の範囲に一定の相違があったことも否定できないとし、契約社員への不支給を不合理ではないとしました。

 

(3)以上のように、最高裁の判断は、非正規就業者と正規就業者の待遇の格差を完全に解消するものではありませんでしたが、個々の労働条件が定められた趣旨が非正規就業者にも当てはまる場合には、正規就業者と差をつけることは不合理であると判断しており、格差是正の道筋を、一定程度示したということが言えると思います。

新型コロナウイルス感染症により社会が大きく変わる中、雇用のあり方も一段と多様化していくのかもしれません。変化の中にあっても法令順守は必要であり、法令の枠内で企業や従業員にとって最善の方策を、弁護士とともに模索することが必要です。

各企業には、非正規就業者の待遇改善は社会的責務であるということを自覚し、格差解消のための取り組みを期待したいところです。

<石田美果>

アフターコロナを見据えた働き方改革の枠組

1 厚生労働省主導による働き方改革

働き方改革は「個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革」とされています(厚生労働省HPリンク)。

このような改革が推進された背景には、人口減少と少子高齢化に伴う働き手の減少と、個々の事情に応じた働き手のニーズの多様化という大きな社会環境の変化がありました。このような変化に対応するための働き方改革のポイントは、①長時間労働と②正規・非正規労働者間の格差の見直しであり、従来の日本型雇用に内在する大きな社会問題の解決を目的としています。

働き方改革関連法は2018年に成立し順次施行され、①長時間労働是正のための規制(残業時間の上限規制、1年あたり5日の年次有給休暇の義務化、労働時間の客観的把握の義務化等)や、②格差是正のための規制(不合理な待遇差の禁止、差別的取扱いの禁止、労働者に対する待遇に関する説明義務の強化等)が進められてきました。

 

2 コロナウイルス感染拡大下の働き方の変化

そのような中で新型コロナウイルス感染が拡大し、新型コロナウイルス感染対策の必要からも働き方は大きく変わらざるを得ない状況となりました。①長時間労働の是正と②格差の是正を内容とする働き方改革を進めてきた企業は、新たに③感染拡大防止のための働き方の変化をも求められることとなったのです。

テレビのニュースなどでは、③感染拡大防止の要請への対応も含めた働き方の変化を、広く働き方改革と呼んでいることもあるようです。たとえば、リモートワークは、改革の名称にふさわしいインパクトと革新性(会社に行かなくてもいいんですか!?)を持っていますし、感染拡大防止効果だけでなく、働き方改革が目標とする多様な働き方を可能にする側面も持っていますので、若干の混乱は避けられないところです。

社会内で、各種の要請のもと働き方の変化が強く求められる状況にあり、不適切な働き方を継続することは、企業を社会的非難にさらし、企業価値を損ねることにつながりかねません。現在、企業は長時間労働と格差是正に加えて感染拡大防止にも配慮した働き方を模索する中で、新たな問題への対応を日々求められる状況にあります。

例えば、リモートワーク下での適正な労働時間管理の在り方は感染拡大防止と長時間労働の是正にかかわる新しい問題ですし、正社員をリモートワークとし非正規社員のみに出社を求めることは感染拡大防止と格差是正にまたがる新しい問題になりえます。また、リモートワークにはセキュリティ上の体制構築も不可欠ですし、リモートワークをきっかけとした働き方の変化はメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への変化を推進し、従業員の意識を変化させるかもしれません。

 

3 働き方の変化に伴う体制づくりの必要性

すでに取り組みを始めている企業も少なくないでしょう。とはいえ、時に衝突しかねないような各種の要請(法令、感染拡大防止、情報セキュリティ、従業員のマインド等)を調整して体制を構築するのは多大な負担を伴うものと思われます。

これらの新しい問題へ対応する適切な体制構築には、業務に関連する各種法令についてその趣旨にまでさかのぼった多面的かつ慎重な法的検討が必要であり、法的な専門家による関与が望ましいです。

当事務所には一般企業での勤務経験のある弁護士も在籍しております。働き方の変化に伴う各種問題について、ご相談ください。

 

山下陽平

 

ポストコロナに向けて事業見直しの視点~コロナ禍危機下でここからが経営者の勝負どころ~

1 はじめに

新型コロナウィルスの感染拡大により、個人生活はもとより会社経営のさまざまな事業局面に影響が生じています。2021年1月には2度目の緊急事態宣言が首都圏、近畿圏、中部圏などの11都府県に出されました。完全な終息はいつとなるのか予測はつきません。新型コロナウィルスの関係では131万人が失業したといわれる一方、株高などにみられる金余りで投資先を探すなどの状況も見られます。

先行きの不透明感を抱えながらも、DX(デジタル・トランスフォーメーション)をはじめスタートアップ企業の誕生がつづくなど、いろいろな変化が見られます。また、従来の業務を見直して、コロナ後に向けて、仕事の進め方や働き方を見直し、変化へのスピード感のある対応をしようという姿勢が大切であると思います。

様々な変化が急激に起きる今日、維持・成長・変革につながる新たな視点に気付いた企業、企業家は強いと思います。大きな枠組みで、法律上の今考えるべき視点を整理して、連続ブログを企画しました。予定している内容は、後述の通りです。

皆さまのお役に立てれば幸甚です。

 

2 DXへの取組み

初回のこのブログでは、最近、よく聞くDXについて、少し述べてみたいと思います。

DXデジタルトランスフォーメーションについては、経済産業省がデジタルトランスフォーメーションのガイドライン(DX推進ガイドライン)を2018年12月にまとめています。それによれば、DXとは企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービスビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位を確立することを指しています。

本ガイドラインは、DXレポートでの指摘を受け、DXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行っていく上で経営者が抑えるべき事項を明確にすること、取締役会や株主がDXの取組をチェックする上で活用できるものとすることを目的としています。

本ガイドラインは、「(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み」と、「(2)DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」の2つから構成されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネットワークやIT化の進んでいない企業も多いところ、紙の文書をデジタル化することでデータのやり取りを各段に便利にし、それをもとに個別の業務をデジタル化する(例、テレワークでネットを使う、ネット決済など)、更には全社的に業務をデジタル化を展開するという段階を進んでいきます。

コロナ禍にあっても、進めておかなければならないデータの利活用を検討していただき、社内、グループ会社間、他社との連携や協力を見直し、新しい企業価値の創造を目指すことは、どの事業者にとっても避けて通れないところと思われます。その見直しの過程で、事業の変更、リスクの洗い出し、自らの事業の強化策、できること・できないことの整理などが明確になってくるものと思います。

 

3 予定している企画内容

(雇用をめぐる問題)

1 働き方改革の枠組み

2 最近の正規・非正規の格差解消をめぐる判例

-最高裁の5つの判決と同一労働同一賃金の原則について

 

(事業再編や事業承継をめぐる問題)

3 廃業を考えるなら、事業承継の4つの手法をまず検討―親族への承継、M&A、自社株売買、信託の活用

4 ベンチャー企業による資金調達

 

(組織の見直し)

5 情報管理-個人情報保護法の改正と情報セキュリティー問題への理解を深めておく

6 社内クレームへの対応-ハラスメントはどこにでも起こりうる意識をもって

7 債権回収の進め方

 

(業務の見直し)

8 不正競争防止法を意識していますか

9 文書管理は適切ですかー契約書印の廃止と文書の保存

10 ディスクロージャーとの遭遇も考えておく

 

<池田桂子>