カスハラ対策法の施行

この秋、事業主にカスハラ対策が義務づけされます。

カスタマー・ハラスメント(以下、単にカスハラと言います。)が社会問題化し、労働者が顧客等との対応で、過度なストレスなく働けるよう、労働環境の整備という側面から、労働施策総合推進法が令和7年6月に改訂され(以下、カスハラ対策法といいます。)、令和8年10月1日から施行されます。

企業には、カスハラ防止のため、必要な措置を講ずべきこととされ、具体的な内容は、厚生労働大臣の定める指針で示されています。以下、その概要をご説明します。

(1)カスハラとは

以下の3つの全てを満たすものが「カスハラ」とされています。

①職場において行われる、顧客・取引の相手方・施設の利用者その他の当該事業者の行う事業に関係を有する者の言動で

②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容されない範囲を超えたものにより

③当該労働者の就業環境を害すること

いわゆるクレームとしていわれるものの中から、上記に該当するものが対象となり厚労省の指針では、以下のようなものが、典型例としてあげられています。

・労働者のプライバシーに関わる要求をすること

・契約内容を著しく超えたサービスの提供を要求すること

・契約金額の著しい減額の要求をすること

・商品やサービス等の内容と無関係である不当な損害賠償要求をすること

・殴る、蹴る、叩く等の暴行

・人格を否定するような言動や土下座の強要

また、同様の質問を執拗に繰り返したり、長時間に渡る居座りや電話で労働者を拘束することも該当します。

 

「就労環境を害する」とは、当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就労環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障を生じることをされています。業務に支障が生じるかどうかの判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」を基準とし、言動の頻度や継続性も考慮しますが、1回の言動でも、その強度により、就労環境を害する場合があり得る、としています。

(2)企業のカスハラ対策の措置義務

企業が行うべき事項は、以下の通りです。

・カスハラに毅然と対応し、労働者を保護する方針を明確化して、これを周知啓発する

・労働者にカスハラの内容、カスハラへの対処の内容を周知する

・相談窓口を設置し、労働者に周知する

・悪質事案への対処方法を予め定め、労働者に周知し、対処を行うことが出来る体制を整備すること

・実際にカスハラが起きた場合には、事実関係を迅速・正確に確認し、速やかに被害者に対する配慮のための措置を行い、再発防止に向けた措置を講ずる

・労働者のプライバシー保護を講じ、相談者である労働者に不利益な取扱をしないことを定め、労働者にこれを周知すること

 

対象となるのは「労働者を雇用する全ての事業主」であり、企業規模、法人、個人を問いません。義務違反に罰則はありませんが、違反した場合には、厚生労働大臣(都道府県労働局)が助言、指導、勧告をすることが出来、正当な理由なく勧告に従わない場合には、企業名を公表することが出来るという規定も設けられ、虚偽の報告や報告を拒んだ場合には、20万円以下の過料の制裁の定めもありますので、適切に対応することが必要です。

 

また、業界ごとに取組がなされ、業種別にカスハラ対策企業マニュアルが作成されており(スーパーマーケット、宅配業等)、これらも参考にして、各企業は、自社の体制を構築していくことが期待されます。

 

池田総合法律事務所では、カスハラ対策の社内体制の整備の支援や具体的なカスハラ事案の解決にも対応しており、是非ご相談ください。

(池田伸之)

 

mints(民事裁判書類電子提出システム)のご紹介

1.mintsとは

mintsとは、民事裁判で、裁判所に主張書面や証拠をオンラインで提出したり、裁判の相手方の主張書面や証拠をオンラインで受け取ったりするためのシステムです。

2026年5月の民事訴訟法改正により、民事裁判手続にmintsが本格導入されました。

導入前は、裁判所への提出書面は、全て紙でプリントし、裁判所と相手方にFAXまたは郵送で送信するというやり方でした。企業のお客様などからは、裁判での書面のやり取りはFAXがメインであるというと、驚かれることもよくありました。

しかし、訴訟代理人によるオンライン提出が義務化され、これまでの紙が中心であった司法の現場も、遅ればせながらオンライン時代へと突入しています。

 

2.mintsの利用について

弁護士以外の方が、民事裁判を起こす場合、あるいは起こされた裁判に応訴する場合にもmintsを利用することが可能です。なお、弁護士以外の方の利用は、任意です(なお、国や自治体の職員が指定代理人となる場合はmints利用が強制となります。)。

mintsの利用により、自宅からオンラインでの書面提出、相手方の書面の受領、期限のリマインドを受け取ること等が可能となります。

mintsを利用するには、アカウント登録が必要ですので、始めに裁判所のホームページにある登録届け出フォームから申請を行います。

裁判所 mintsページ

https://www.courts.go.jp/saiban/minjidejitaruka/mints_gaiyou/index.html

 

3.mintsの現状と今後の見通し

現状では、裁判所も利用者もmintsのシステム操作に慣れていない部分があり、未だ混乱が見られる場面もあります。また、セキュリティ面の懸念がないわけではありません。

しかし、これまでのアナログな手続きと比べると、格段に事務処理の手間が少なくなり、紙資源の大幅な削減等のコスト削減が見込まれます。

何よりスピーディーな対応が可能となることで、裁判による紛争解決の迅速化につながることが期待できます。

なお、これまでmintsについて説明してきましたが、実はmintsは、裁判所において現在開発中のTreeeS(ツリーズ)に移行するまでの暫定的なシステムであり、いずれTreeeSへの移行が前提となっています。22027年1月に名古屋高裁本庁などで先行導入され、本格導入は、2027年度中に予定されています。

TreeeSでは、書面のオンライン提出(e-提出)に加え、訴訟記録の電子化と裁判所、当事者による管理(e事件管理)、ウェブ会議などを活用した裁判期日の実施(e法廷)の機能が見込まれています。

(石田美果)

会社法改正の中間試案

令和8年(2026年)3月18日、会社法改正の中間試案がまとまりました。パブリックコメントによる意見募集は既に終了しており、パブリックコメントでの意見を参考にして要綱案がまとめられ、令和9年(2027年)以後、改正法案が国会に提出されるという流れです。

 

中間試案で示された改正点は、株式の発行のあり方、株主総会のあり方、企業統治のあり方に関わる改正といった多岐にわたり、その細目は次のとおりです。

<株式の発行のあり方の見直し>

使用人等に対する株式の無償交付、株式交付制度の適用対象・手続、現物出資制度などが盛り込まれています。

<株主総会のあり方の見直し>

バーチャルオンリー株主総会及びバーチャルオンリー社債権者集会、実質株主確認制度、株主総会のデジタル化、「会議体」としての株主総会の在り方、株主提案権などが盛り込まれています。

<企業統治のあり方の見直し>

指名委員会等設置会社制度、責任限定契約制度、事業報告等及び有価証券報告書の開示の合理化などが盛り込まれています。

 

以上の様な多岐に渡る改正ですが、いずれも企業の実務に直結する課題です。令和元年(2019年)の大改正の流れをくみ、株主総会を合理化し、過剰な規制を見直して、デジタル化やコーポレートガバナンスの実効性向上をはかるとともに、「人材」を資本・投資の対象として捉える「人的資本経営」に対応するという背景があります。

会社法は平成18年(2006年)に施行された後、平成26年(2014年)と令和元年(2019年)の2回大きな改正がなされています。前回、令和元年の大きな改正では、社会のデジタル化を反映した株主総会資料の電子提供制度や、コーポレートガバナンスの実効化を図るための社外取締役の設置義務化といった改正がなされました。先に挙げた株主総会のあり方や企業統治のあり方の見直しに関する今回の改正も、より一層のデジタル化やガバナンスの実効性向上といった社会の変化への対応を目的としたものです。また、株式発行のあり方の見直しは、インセンティブ報酬を柔軟化する内容を含み「人的資本経営」に対応するための改正です。

 

多様な論点も、大きな視点を押さえると、それぞれの制度や改正点が理解しやすくなるかも知れません。なお、A案、B案などの複数の案が示された論点も多く、どちらの案がとられるかによって、実際の会社運営の影響は異なったものになるので、注意深く改正内容をフォローしていく必要があります。

(弁護士 山下 陽平)

【法律コラム 目次】

 

掲載日 テーマ 執筆者
R8.9.16 カスハラ対策法の施行 伸之
R8.9.1 mints(民事裁判書類電子提出システム)のご紹介 石田
R8.8.6 会社法改正の中間試案 山下
R8.7.29 有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示② 小澤
R8.7.1 有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示 小澤
R8.6.16 株主総会のシーズン、株主の注目を集めるこれからの経営視線 桂子
R8.6.3 共同親権の対外関係(特に幼稚園との関係)について 揖斐
R8.5.18 共同親権と具体的な問題(「監護者の指定」「監護の分掌」「親権行使者の指定」 栗本
R8.5.1 共同親権と具体的な問題(共同行使か、単独行使が可能か 伸之
R8.4.16 AIとSNS 石田
R8.4.9 AIと広告 小澤
R8.3.18 AIガバナンスについて 桂子
R8.2.20 所有不動産記録証明制度について 山下
R8.2.2 相続人がいないときの財産の遺し方 川瀬
R8.1.15 相続財産清算人制度(特別縁故者に対する相続財産分与) 栗本
R7.12.17 増えている相続財産清算人制度の利用 桂子
R7.12.2 ペットにかかる法律問題2(事業者編) 伸之
R7.11.21 ペットに関する法律問題 石田
R7.11.1 交通事故と刑事手続 ~危険運転致死傷罪その他~ 小澤
R7.10.29 自転車に関する昨今の道路交通法改正 ~自転車事故を起こさない・逢わないために~ 山下
R7.10.14 オンライン(リモート方式)で公正証書遺言が作成できるようになりました 川瀬
R7.9.17 下請法改正(2) 小澤
R7.9.2 下請法改正(1) 栗本
R7.8.19 区分所有法の改正2025~マンション等の区分所有建物の再生と管理を円滑に~ 桂子
R7.8.1 公益通報者保護法の一部改正について 伸之
R7.7.3 財産分与に関する改正 石田
R7.6.16 養育費に関する民法改正 小澤
R7.6.9 養子縁組に関する改正 川瀬
R7.5.22 面会交流に関する改正 山下
R7.5.1 離婚後の子どもの監護(養育)に関するルールについて 栗本
R7.4.16 家族法の改正で、これからの「家族」の行方は? 桂子
R7.4.1 情報流通プラットフォーム対処法(以下、情プラ法と略記します。)について (運用状況の透明化)― その2 伸之
R7.3.18 情報流通プラットフォーム対処法について 石田
R7.3.3 刑事手続と証拠 小澤
R7.2.26 各種アカウントのパスワードをどう相続人に知らせるか・・・。 山下
R7.2.19 相続土地国庫帰属制度の運用状況 川瀬
R7.1.23 業績連動報酬のこれから 桂子
R6.12.15 遺言書保管制度のその後 伸之
R6.12.4 発信者情報開示請求 石田
R6.11.15 財産開示期日の後について 小澤
R6.11.7 相続手続の変更点について(その2)(不動産、預貯金の調査) 川瀬
R6.10.24 相続手続の変更点について(戸籍の取り寄せ手続) 山下
R6.10.1 法的な紛争と税制の関係⑥ 倒産と税務上の取り扱い 伸之
R6.9.15 法的な紛争と税制の関係⑤ 不動産取引 石田
R6.9.1 法的な紛争と税制の関係④  生前贈与するなら気をつけたいこと 桂子
R6.8.16 法的な紛争と税制の関係③  離婚と税金 小澤
R6.8.1 法的な紛争と税制の関係②  相続と税金 川瀬
R6.7.1 法的な紛争と税制の関係①  交通事故と所得税 山下
R6.6.21 介護報酬改定で令和6年4月から導入された「高齢者虐待防止の促進」について 小澤
R6.6.14 裁判のIT化で裁判実務はどこまで変わるか 桂子
R6.6.3 フリーランス保護法(正式名称:「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)について-その② 伸之
R6.5.24 民法改正による嫡出推定制度に関する変更点 石田
R6.5.1 2024年労働基準法施行規則の改正内容 小澤
R6.4.23 相続登記を免れるために相続放棄をしたらどうなるか 山下
R6.4.17 相続登記の義務化がスタートしました! 川瀬
R6.3.15 最高裁判例紹介⑤ 桂子
R6.3.1 最高裁判例紹介④ 伸之
R6.2.15 最高裁判例紹介③ 石田
R6.2.1 最高裁判例紹介② 小澤
R6.1.25 最高裁判例紹介① (遺贈放棄後の相続財産の帰属) 川瀬
R5.12.15 公正取引委員会『労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針』について 小澤
R5.12.1 副業・兼業 これからの働き方を使用者側の立場から見てみると 桂子
R5.11.15 副業・兼業について(労働者側の注意点) 山下
R5.11.1 フリーランス保護法(正式名称:「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)について 伸之
R5.10.19 社会保険の適用拡大、賃金デジタル払い解禁、育休取得状況公表義務化 ~働き方改革への対応は十分ですか~ 石田
R5.10.2 パワハラの定義と対応(「働き方」に関する労働法制連載) 小澤
R5.9.20 2024年の重大問題-時間外労働に関する法改正と未払残業代請求のリスク 川瀬
R5.9.6 「働き方」に関する労働法制について 山下
R5.8.15 これからの経営者報酬の設計について 桂子
R5.8.1 会社の機関設計 「監査等委員会設置会社」という選択について 桂子
R5.7.1 第6回 所有者不明土地・建物の管理制度 伸之
R5.6.19 第5回 共有物の変更・管理に関する見直し 石田
R5.6.1 第4回 民法の相隣関係の改正について 小澤
R5.5.17 第3回 相続土地国庫帰属制度について 川瀬
R5.5.1 第2回 相続登記が義務化されます!ご注意を 桂子
R5.4.14 所有者不明の土地に関する法律や制度の改正について(第1回) 山下
R5.3.31 財産開示手続について(第2回) 石田
R5.3.15 財産開示手続について 小澤
R5.3.1 自動車に対する強制執行 伸之
R5.2.14 AI(人工知能)と弁護士業務 小澤
R5.2.3 債権回収のセオリー 桂子
R5.1.25 法人破産について(第4回) 山下
R4.12.19 法人破産について(第3回) 石田
R4.12.1 法人破産について(第2回) 伸之
R4.11.15 法人破産について(連載第1回) 小澤
R4.11.1 下請法について(第3回) 桂子
R4.10.17 下請法について(第2回) 川瀬
R4.10.4 下請法について(連載・全3回) 石田
R4.9.21 商標について 4 ~商標とフランチャイズ契約~ 山下
R4.9.5 商標について 3 ~商標・不正競争に関する近時の裁判例の紹介~ 伸之
R4.9.5 環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載10 小澤
R4.8.10 商標について 2 ~商標登録手続き、費用の概要~ 小澤
R4.8.2 商標について ~商標とは~ 川瀬
R4.7.25 大家さんが知っておきたい、賃貸経営トラブルへの対処法(連載・全6回)~第6回~) 桂子
R4.7.11 環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載9 小澤
R4.6.17 大家さんが知っておきたい、賃貸経営トラブルへの対処法(連載・全6回)~第5回~) 山下
R4.6.2 大家さんが知っておきたい、賃貸経営トラブルへの対処法(連載・全6回)~第4回~) 石田
R4.5.16 大家さんが知っておきたい、賃貸経営トラブルへの対処法(連載・全6回)~第3回~) 伸之
R4.5.2 大家さんが知っておきたい、賃貸経営トラブルへの対処法(連載・全6回)~第2回~) 小澤
R4.4.15 大家さんが知っておきたい、賃貸経営トラブルへの対処法(連載・全6回) 川瀬
R4.4.7 環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載8 小澤
R4.4.1 労働審判の手続きで解決できる場合・できない場合とは 桂子
R4.3.28 労働審判手続きでの残業代請求について 山下
R4.3.4 労働審判制度の概要 石田
R4.3.1 紙の約束手形の廃止方針と廃業 小澤
R4.2.15 不正競争防止法における営業秘密保護3 伸之
R4.2.3 不正競争防止法における営業秘密保護2 小澤
R4.1.17 不正競争防止法における営業秘密保護1 川瀬
R4.1.13 環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載7 小澤
R3.12.21 環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載6 小澤
R3.12.13 賃貸物件の建物明け渡しの強制執行 山下
R3.12.7 子どもの引き渡しを強制的に求める方法は? 桂子
R3.11.26 環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載5 小澤
R3.11.16 預貯金債権に関する情報の取得手続について 石田
R3.11.12 環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載4 小澤
R3.10.28 給与債権に関する情報の入手手続きについて 伸之
R3.10.15 環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載3 小澤
R3.10.11 改正民事執行法~不動産に関する情報取得手続と利用の実情~ 小澤
R3.9.30 民事執行法の改正内容と財産開示手続の利用の実情 川瀬
R3.9.22 環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載2 小澤
R3.9.17 環境問題と再生エネルギーその他環境に関する連載1 小澤
R3.9.13 会社法改正に伴う事業報告書の記載事項の変更について 伸之
R3.9.3 社債に関する改正点 山下
R3.8.23 株式交付に関する規定の新設 石田
R3.8.16 土壌汚染対策法の概要 小澤
R3.8.2 会社補償・役員賠償責任保険のルールの新設 小澤
R3.7.20 取締役の報酬に関する規律の見直し 川瀬
R3.7.2 社外取締役を置くことの義務付けについて 伸之
R3.6.7 中小企業とリース契約 小澤
R3.6.1 ハラスメント防止のための社内体制の強化を! ~ハラスメントはどこにでも起こりうる意識をもって~ 山下
R3.5.28 令和に入って初めての会社法の改正~株主総会の運営や取締役の職務執行の一層の適正化~ 桂子
R3.5.18 不正競争防止法を意識していますか 石田
R3.4.26 債権回収の進め方 小澤
R3.4.19 デジタル時代の契約書と文書管理について 川瀬
R3.4.6 身元保証は必要?約束するのなら契約を見直しましょう! 桂子
R3.4.1 情報管理-個人情報保護法改正と情報セキュリティ- 藪内
R3.3.16 スタートアップの資金調達について 桂子
R3.3.3 廃業の前に事業承継の検討を! 伸之
R3.3.3 事業再構築補助金について 小澤
R3.2.18 「最近の正規・非正規の格差解消をめぐる判例」 石田
R3.2.5 アフターコロナを見据えた働き方改革の枠組 山下
R3.1.18 はじめに
ポストコロナに向けて事業見直しの視点~コロナ禍危機下でここからが経営者の勝負どころ~
桂子
R3.12.18 立会人型電子契約に関する論点 藪内
R2.12.10 遺留分減殺請求から遺留分侵害額請求権への改正による影響について 伸之
R2.11.24 コロナ版ローン減免制度について 石田
R2.11.9 若い人も遺言書を作成してみませんか 川瀬
R2.10.27 非接触事故でも、賠償請求ができますか その2 単独事故として処理された場合  山下
R2.10.2 公益通報者保護法の改正について 小澤
R2.9.18 スタートアップ(独立・起業)で大切にしたい商標と商号 桂子
R2.8.25 法務局における遺言書の保管制度が始まりました 伸之
R2.8.10 発信者情報開示請求 石田
R2.7.17 定期金賠償(令和2年7月9日最高裁)について 川瀬
R2.7.13 孤独死後の法律問題 山下
R2.6.11 土壌汚染が疑われる土地売買その他の注意点 小澤
R2.5.26 テレワークの推進に向けて 桂子
R2.5.21 商標等の「商標的使用」は許されるか、-「商標としての使用」を比較して- 伸之
R2.5.18 新型コロナウィルス感染拡大防止対策に関連する個人情報取り扱いの留意点 藪内
R2.5.12 パワハラ防止法について 石田
R2.5.8 事業の継続、廃止に向けた手続きについて 伸之
R2.5.8 新型コロナウイルス感染症と賃料・テナント料 小澤
R2.5.8 新型コロナウイルス感染症と雇用関係 小澤
R2.5.1 賃貸アパート経営における民法改正の影響(連帯保証について) 川瀬
R2.4.2 民法改正による交通事故の損害賠償請求の影響は? 山下
R2.3.2 刑事事件での『司法取引』について~最近の3事案を参考にして~ 小澤
R2.2.19 発明の進歩性判断~「予測できない顕著な効果」~について 桂子
R2.2.13 【配偶者居住権が新設されます】 藪内
R2.1.28 遺産分割の仕方により、相続税総額が違ってくることはご存知ですか。 伸之
R2.1.20 法定相続情報証明制度について 石田

 

有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示②

サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が東京で開催した7月17日の『SSBJ基準解説セミナー2026』に,小澤が参加しました。

このセミナーでは,最新のサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)の詳細がSSBJ委員長ほかから説明されました。

 

1 SSBJ基準の構成

SSBJ基準は,

①適用基準(サステナビリティ開示基準の適用)

②一般基準(サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」)

③気候基準(サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基 準」)

④温対法基準(サステナビリティ開示実務対応基準第1号「温対法におけるSHK制度の定める方法により測定し報告する温室効果ガス排出を用いて『気候基準』の定めに従う場合の開示」)

の4本の基準から構成されています。

 

2 サステナビリティ情報の位置付け

サステナビリティ関連財務開示は,財務諸表の補足・補完の役割を果たすものであるとされています。

主として投資家にとって,企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会に関して,重要性がある情報を適正に開示することが必要です。

 

3 一般基準のコアコンテンツ

一般基準の中では,コアコンテンツは,①ガバナンス,②戦略,③リスク管理,④指標及び目標の4個の要素から構成されています。

①については企業統治上当然のこととは思いますが,②については企業が自社のビジネスサイクル等から短期・中期・長期の定義をしたうえで,ビジネス上のリスクを現在及び将来の財務的影響を理解できるようにする情報を開示する必要があるとされています。

③リスク管理は,リスクを識別・評価し,優先順位をつけ,モニタリングをするために用いるプロセスや関連する方針に関する情報等を開示することが求められていますが,まずはリスク分析が重要になるはずです。

④指標及び目標は,現時点での中心は気候変動問題になるのでしょうが,気候問題だけが企業が指標や目標を設定して取り組むべき点ではありません。企業価値を向上させるために,どのような指標や目標を設定し,それがどのように財務諸表に影響するのかを分析しつつ,指標や目標を達成していくかが必要になるはずです。

気候問題以外では,やはり環境,社会,従業員,人権の尊重,腐敗防止,贈収賄防止,ガバナンス,サイバーセキュリティ,データセキュリティなどに関する事項などが検討すべきものと考えられますが,これは財務諸表という数字だけの問題には収まりません。

特に社会との関係や,従業員との関係,人権の点などは,弁護士がSSBJ基準で求められている点を分析・評価するには最適ではないかと考えられるところです。

 

池田総合法律事務所では,企業活動の将来を見据えて,リスクと機会を分析して,企業価値の向上を企業経営者とともに考えていくことのできる弁護士がそろっておりますので,サステナビリティ情報の点についてご検討の法人の方は,一度,池田総合法律事務所にご相談ください。

〈小澤尚記(こざわなおき)〉

有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示

前回の「株主総会シーズン、株主の注目を集めるこれからの経営視線」で紹介した,有価証券報告書等における企業のサステナビリティ情報の開示を今回は取り上げます。

有価証券報告書に,サステナビリティ情報の記載欄を新設することが求められています。

サステナビリティ情報の記載欄に記載することが求められているのは,サステナビリティに関する考え方及び取組です。この考え方及び取組は,企業の中長期的な持続可能性に関する事項について,経営方針・経営戦略等との整合性を意識して説明するものとされています(後記の別添『サステナビリティ情報の開示について』より)。

具体的には,「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の開示が求められています。

このうち,「ガバナンス」「リスク管理」はすべての企業に開示が求められています。

他方,「戦略」「指標及び目標」については,各企業が重要性を踏まえて開示を判断する必要があります。

また,人的資本について「人材育成方針」や「社内環境整備方針」,方針に関する指標の内容や指標による目標・実績を開示することも求められています。

金融庁の作成した『記述情報の開示に関する原則』の別添『サステナビリティ情報の開示について』では,サステナビリティ情報には,国際的な議論を踏まえると,例えば,環境,社会,従業員,人権の尊重,腐敗防止,贈収賄防止,ガバナンス,サイバーセキュリティ,データセキュリティなどに関する事項が含まれうると考えられる,とされているところです。

 

そして,サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が,サステナビリティ開示基準(SSBJ基準)を策定しており,このSSBJ基準が一般に公正妥当と認められるサステナビリティ情報の作成および開示に関する基準に従って,有価証券報告書等のサステナビリティ関連記載事項を記載することを義務化した,内閣府令における『基準』として告示において指定されています。

 

このサステナビリティ情報の開示ですが,スコープ3温室効果ガス排出量(企業の上流と下流から排出される温室効果ガスの排出量。スコープ1,スコープ2以外の間接排出)は,サステナビリティ情報のうちの『環境』として理解しやすいところですが,ほかの事項については具体的にどのような情報を開示すべきかは難しい判断が求められます。

このうち,人権の尊重は,弁護士は基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命としており(弁護士法1条1項),ビジネスにおいて基本的な人権が尊重されているのか,ビジネス活動において人権尊重の点から問題があるいは否かを企業とともに考えていくことに最適の存在と考えられます。

また,腐敗防止などのガバナンスについても,内部統制システムの整備という点に帰結するかもしれませんが,整備された内部統制システムがあったとしても,それが実効ある制度となるようにシステムを見直し,システムが抽出した問題事案の事実認定,解決策の提案も弁護士業務の中核になるものですので,企業活動において弁護士が適切な役割を果たすことができます。

 

池田総合法律事務所では,企業活動のサステナビリティを提供するための助言等の業務も取り扱っていますので,池田総合法律事務所に一度ご相談ください。

〈小澤尚記(こざわなおき)〉

株主総会のシーズン、株主の注目を集めるこれからの経営視線

業種にもよりますが、6月は多くの上場企業で株主総会が開催される月です。

昨年3月には、「株主総会前の適切な情報提供について」という要請が政府から出され話題となりました。決算期の財務情報はじめ、株主にとって重要な情報を得られる有価証券報告書が株主総会よりも前に開示されることによって、有益な情報を得て議決権を行使すべきだというのです。昨年は、総会前とはいえ総会前日に開示をおこなったのは64.4%で、好ましいと言われる総会前3週間以上に開示をしたのは1社だけであったそうです(金融庁「2025年3月期に係る総会前開示の状況」)。今年度はどういう結果となったのか注目されます。ある金融機関の調査では、総会前開示は76.9%、そのうち、1日前60.4%。2日前12.5%、3日前9.2%で8割という情報もあります(三菱UFJ信託銀行の調査)。

2026年4月10日、金融庁と東京証券取引所は、コーポレートガバナンス・コードの改訂案の改訂案を公表しました成長投資の促進、取締役会の機能強化、に加えて、有価証券報告書の定時株主総会前の開示の3点が改訂案の留意事項に掲げられています。議決権行使に当たっての株主への情報提供の早期化、充実化を図ろうとするものですが、要請の発令から2年目となる今年の株主総会では総会前開示が、更に一般的に実施される方向となりそうです。

 

株主との対話が求められる昨今、有価証券報告書においては、サステナビリティ情報をはじめ、コーポレートガバナンスに関する情報、政府保有株式の保有状況など、重要な関心を集める情報が掲載されています。会計監査人との連絡、協力のもと、自社にとって最適な対応、その時期など、検討すべき課題が少なくありません。また、株主にとっても、重要な情報をどのように得ていくのか、会社の現状、そして事業戦略を知る手がかりが増えるということで期待すべき方向になると思います。

 

次回以降、検討されている会社法の改正動向、コーポレートガバナンス・コード改訂案などについて、ご紹介したいと思います。

なかでも、企業を超え、地域の課題にもかかわっての経営が求められる時代に、これから避けて通れないサステナビリティに関する話題も取り上げてみたいと思います。                                                                                 <池田桂子>

共同親権の対外関係(特に幼稚園との関係)について

1 はじめに

今回は、第三者、例えば子どもが幼稚園に通っている場合の幼稚園の対応等を取り上げ、共同親権の対外関係について説明をしたいと思います。

これまで、幼稚園としては、子どもの両親が離婚した場合であっても、日頃幼稚園に来ている親が一緒に暮らしている(単独)親権者であり、法的な決定権を有しているという前提で対応すれば足りました。

しかし、これからは、日頃幼稚園に来ていない別居親も共同親権者であることがあります。その場合に起きる問題を検討してみたいと思います。

2 子どもの送迎、日常の連絡や幼稚園の行事への出席等の場合

これらの行為は共同親権となっても単独で親権行使することができる日常の行為に当たります。しかし、これまで幼稚園に来ていない別居親が共同親権になったと言って子どもを迎えに来た場合に、その別居親に子どもを引き渡してよいのでしょうか。

幼稚園としては、単独親権から共同親権に実際に変更になったかどうかがよくわかりません。仮に、別居親が、共同親権に変更になったとの公的書類を持ってきていたとしても、事前に何の連絡もなく、今まで送迎をしていた同居親と異なる別居親がお迎えのために幼稚園に来た場合には、場合によっては連れ去りのおそれがあることを考慮すると、まずは、同居親に連絡を取り、お迎えについての協議がどのようになっているかの確認をすることが望ましいでしょう。同居親に連絡を取ったが、同居親が別居親に子どもを引き渡すのに反対し、協議が整わなかったような場合には、幼稚園としては、子どもの安全確保(子の連れ去り防止)を図るという観点から、現在の主たる監護状態を維持し、これまでの送迎ルールのとおり、同居親に引き渡すとの対応を取らざるを得なくなることもあります。ただ、別居親からの反発を防ぐためにも、幼稚園としては、父母に対し、速やかに父母間で送迎に関するルールを協議し、合意されたルールを連絡してもらうよう申し入れることが重要でしょう。

3 子どもの転園や遠方への転居等の場合

転居に伴う幼稚園の転園や、遠方への移動など、子どもの生活基盤を大きく変える重要事項については、共同親権者が親権を共同行使すべき場合に該当します。したがって、こうした場合において、幼稚園が、別居親の同意がないことを知りながら、又は不注意によって知らずに手続を進めてしまったときは、後日、別居親から、契約の効力を争われたり、不法行為として損害賠償をも請求されたりするリスクがありますので、注意が必要です。

幼稚園が、共同親権であることを認識している場合において、別居親から同居親とは反対の意向が示されたときは、原則として、そのまま手続を進めるべきではありません。幼稚園としては、父母で協議し合意の上で申込みをしてもらうように説明をすることになります。どうしても父母の間で協議が整わない場合には、特定事項に関する親権行使者の指定の審判等によって、単独による親権行使ができる方法をとってもらうことを勧めることも考えられます。

4 親権の単独行使が認められる場合

3の場合においても、子ども利益のため急迫の事情があるときには、親権の単独行使が認められます。具体的には、DVや虐待からの避難が必要である場合のほか、同居親の急な国内転勤等に伴って子どもを転居させる場合などで、手続の期限が差し迫っているときにも、転勤が決まった後の父母間の協議状況や別居親が子どもの転居に同意しない理由等の個別の事情を踏まえて、親権の単独行使が認められる場合があります。ただ、どのような場合に単独での親権行使が認められるかは、個々の事情を総合判断することになると思われます。

共同親権者間において、監護者の指定や監護の分掌が定められている場合も、当該監護者はその監護の範囲内において単独で決定することができますが、どこまでの範囲が含まれるかは個別の定めによりますので、その旨の取り決め(審判書や協議書等)を申告・提示してもらうことが確実です。

上記の各場合を含め、第三者として対応に迷われる場合には、ぜひ当事務所にお気軽にご相談ください。

                             (揖斐潔)

共同親権と具体的な問題(「監護者の指定」「監護の分掌」「親権行使者の指定」)

1.はじめに

前回は、共同親権の原則的な場合についてご説明しました。

共同親権の場合、父母が共同して親権を行うべき特定の事項(進学や転居、重大な医療行為など)について、「父母の意見が合わなかったら、子どもの手続きが止まってしまうのではないか」と不安に感じる部分もあると思います。

もっとも、共同親権を選択した場合でも、共同親権とあわせて「監護者の指定」「監護の分掌」「親権行使者の指定」を行うことができます。これにより、ご家庭の状況に合わせて、より柔軟にお子様の生活環境や父母の円滑な協力体制を整えることが可能になります。

今回は、「監護者の指定」「監護の分掌」「親権行使者の指定」を行った場合に、意思決定ルールがどう変わるのかについて、具体的なケースを交えてご説明します。

 

2.監護者の指定

共同親権下であっても、父母のどちらか一方を監護者に指定することが可能です。

監護者を指定した場合、身上監護の重大な行為(住まいの選択や進学先の決定など)を含む身上監護全般について、監護者が単独で決定することができるようになります。

例えば、お子様と一緒に暮らす監護者が、生活環境を整えるために近所に引越しを検討する場合、もう一方の親の同意を待たずに速やかに判断・契約を進めることができます。

これにより、生活に密着した事項をスムーズに判断できるようになります。

 

4.監護の分掌

お子様の監護に関する役割分担を柔軟に決めるためには「監護の分掌」が有効です。どちらか一人に決めるだけでなく、父母が役割を分担する、それぞれのご家庭に最適な形での取り決めが可能です。

具体的には、期間や決定権について監護の分掌を定めることが考えられます。

例えば、「平日は父母の一方が監護を担当し、土日祝日は他方が担当する」「父母が週ごとに交互に監護を担当する」などと定めた場合、それぞれの期間内においては、身上監護の重大な行為を含む身上監護全般について、担当者が単独で決定することができるようになります。

また、「教育に関する事項は一方の親に任せ、転居や医療などの一定の事項は父母で協議して決める」と定めた場合、進学先の選択など教育に関する重大な行為を含む教育全般について、任せられた一方の親が単独で決定することができるようになります。

 

5.親権行使者の指定

特定の法律行為(契約など)に限って、あらかじめ親権を行使する者を定めておくのが「親権行使者の指定」です。

例えば、パスポートの申請の際には親権者の同意が必要となるところ、こうした特定の行為について、お子様と一緒に暮らす親を親権行使者に指定しておけば、その親が単独で手続きを進めることができます。

これにより、窓口での混乱や父母双方の署名が揃わないことによる手続きの停滞を防ぐことができます。

 

6.終わりに

共同親権は、全ての事情について父母が共同して親権を行使しなければならないという硬直的な制度ではありません。今回ご紹介したように、監護や親権行使の権限をあらかじめ整理しておくことで、父母の協力を維持しつつ、お子様の生活環境を迅速に整えることが可能になります。

それぞれのご家庭の状況に合わせ、どの部分を共同にし、どの部分を単独にするかという。最適なルールの設計こそが、共同親権を円滑に運用するためのポイントといえるでしょう。

当事務所では、法改正後の新しい家族の形に合わせた、実効性の高い取り決めをサポートしております。具体的な設計や不安な点については、ぜひお気軽にご相談ください。

(栗本真結)

共同親権と具体的な問題(共同行使か、単独行使が可能か)

1.親権に関する法改正が令和8年4月1日より施行され、離婚にあたっての親権者の指定については、単独親権のほか、共同親権も選択が可能となりました。すでに離婚したケースで単独親権と決めた場合にも、共同親権への変更申立が可能です。

共同親権となった場合に、具体的に子どもに関わる事項について、それが、共同で行われなくてはいけない事項なのか、あるいは、単独でも決めてしまえるものなのか、その判断基準について、お話をしたいと思います。

今回は、共同親権の原則的な場合をご説明し、次回は、共同親権とあわせて、監護者を指定したり、監護を分掌したり、あるいは、親権行使者が指定された場合に、その原則がどのように変わるのかご説明をしたいと思います。

 

2.まず、共同親権の場合、監護教育に関する日常の行為以外は、父母が共同して親権を行使することになります。同居親が単独で親権を行使できる行為は、日々の生活の中で生じる監護教育に関する行為で子に重大な影響を与えないもの、たとえば、食事、衣服の指定、学校、保育園等への連絡、習い事の決定、心身に重大な影響を与えない医療行為の決定、通常のワクチン接種、高校生のアルバイトの許可等がこれにあたります。

 

3.子に重大な影響を与え、共同して親権行使をしなくてはいけない事項は、以下の通りです。

(1)子の転居、進学先の決定、心身に重大な影響を与える医療行為の決定

受験先の選択自体は、日常行為と考えられますが、最終的には進学先を決定することになりますので、共同親権行使の対象となり、予め受験先の決定にあたっては、協議をしておいた方が無難でしょう。

(2)子の預貯金の通帳の管理等の財産管理や子の氏の変更等の身分行為の代理

 

4.共同親権を行使すべき事項について、父母に意見対立があるときは、家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が一方を親権行使者と指定することにより、その当該事項に限り、単独で行使をすることができます。また、緊急性があって、協議や家庭裁判所の決定手続を待っていては子の利益を害する場合、例えば、締切の切迫した入学手続きや子に緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合等にも単独で行使できます。

 

5.単独親権の場合は、同居親とともに子が転居するにあたっては、親権を持たない親の了解をとる必要はありませんが、共同して親権を行う場合には、相手に転居先や転居時期を知らせて、協議をする必要があります。

また、これまでの単独親権の場合、別居親の関与なく行われた、子の氏の変更も共同親権の場合には、父母連名で行う必要があるので、注意を要します。ただ、調停離婚の場合には、子の氏の変更について、単独で行うことが出来る旨予め合意しておけば、共同申請でなくても子の氏の変更許可の申請をなしうるものとされていますので、こうした条項を入れておきましょう。

(池田伸之)